重岡大毅の“泣きの演技”が新境地へ 『雪女と蟹を食う』“死”と“生”を描いた凄まじい第1話
7月8日深夜より放送開始となった、『雪女と蟹を食う』(テレビ東京系)。漫画家Gino0808による同名作品を原作とした本作は、自殺を決意した男が強盗した女とともに、死ぬ前に上等な蟹を食べるために北海道まで行くロードトリップ作品。主演にジャニーズWESTの重岡大毅を迎え、“雪女”こと彩女役に入山法子がキャスティングされた。
にしても、凄まじい第1話であったと思う。もともと原作漫画が“死”を旅のゴールにするという暗さをはらんでいるため、その憂いをメインキャストがどのように体現するのかが重要ポイントになっていた。特に、登場と同時に首をくくろうとする北役の重岡は、本人が快活で笑顔が印象的な役者であるため、どのように北役を演じるかが注目されていたことだろう。結果、彼は迫真極まる演技で圧倒させた。原作漫画でも印象的なこの場面は、ドラマでは約2分もの長回しの間、重岡が呼吸を乱し、泣きじゃくり、死を決断しきれない男の感じる恐怖をものすごい気迫で表現した。重岡といえば、これまでの出演作品でもとにかく泣きの演技が定評であるが、そんな彼の“十八番”もここにきて新境地に達したと、容易に言える。
原作の北は外見がもう少し小汚くて男くさく、内面に抱える弱さとトラウマをあまり見せないのに対し、本作の北はそれを全面的に出している。そこには重岡らしさが反映されていて、“彼が演じるからこその”北になっているのだ。“原作漫画の実写化”を考えたとき、もちろん原作に忠実であることは多少なりともファンに求められる。しかし、単純に漫画の内容をなぞっていくだけではなく、キャラクターをより自分のものにした役者のオリジナリティある演技を見せることも、改めてその作品を楽しめる“新しさ”だ。展開に関しても、漫画とは少し違うニュアンスを持たせつつも結局同じところに辿り着いている。それは単なるミミックよりも、しっかり作品のテーマ性を理解したからこそできることではないだろうか。
本作が「死を旅のゴールとする」と先述したが、結局のところ第1話の北が自殺を諦めてカップラーメンを食べたり、蟹ならびに北海道グルメを食べようとしたり、旅先のラーメンで舌鼓を打ったり食にこだわる様子は「生」の部分を描いているのだ。死を意識すればするほど、肉体的に生きることを求める。食欲に性欲……そういった欲望が渦巻く北の「北海道へ蟹を食べに行って死ぬ」という旅路は、死にいく旅であると同時に生へとも向かうものなのだ。だからこそ先述した活発で明るい印象の強い重岡が北役を演じるというのは、北のもつ“生へのエネルギー”を体現するうえでなかなかのキャスティングだったように思える。
そういった「死生観」をテーマにした非常に興味深い本作は、もう一人重要な人物が登場する。「もし雪女が現実にいたら、きっとこんな顔で笑うのだろう」と北に称される、謎のセレブ妻・彩女だ。彼女は図書館で出会った北に尾行され、家に着くとそのまま玄関で脅迫され、体を明け渡す。もともと北は風俗の広告を見て「なんで人妻?」と呟いていたように、性行為に関してはまともな倫理観を持っていた。だから強盗も強姦が目的ではなかったのだが、彩女にむしろ提案されるかのように、彼は彼女の底知れぬ魅力に引き込まれていく。