NHKがエンタメ界に投じた一石 脚本開発プロジェクトWDRの狙いをプロデューサーに聞く

NHKの脚本プロジェクトWDRの狙いを聞く

選択肢が増えることが何よりも重要

――お二人はどういうドラマを作りたいというのはありますか?

保坂:Netflix『愛の不時着』や『イカゲーム』のような作品ですね。現在、韓国ドラマが盛り上がっていますが、これまで欧米ではアジアのコンテンツはあまり受けないと思われていたものが、この二作がヒットしたことで、アジアの作品でもイケるんじゃないかという機運が高まってきた。あの二作に負けないような世界中で話題になるドラマを作りたいですね。

上田:テーマ性とエンタメ性を両立したドラマですね。私は特によるドラではテーマから企画を考えていくことが多くて、テーマを研ぎ澄ましていけばドラマとしても面白くなるはずだと思っている部分がありました。テーマ性とエンタメ性はトレードオフのような気がしていたんですね。でも本来は両立できるはずで、海外ドラマの夢中で観てしまう要素を取り込むことで、もっとエンタメ性を強化ができるはずだと思っています。

保坂:僕も以前はエンタメ性を追求する必要性をあまり感じていなかったのですが、続きを見たくなるような「引っ張り」をどう作るかといったノウハウをアメリカで学び、「なるほど」と思うことが多くて。このスキルはテーマ性を求められるNHKのドラマにも必要だと思ったんですよね。

上田:たとえば、Amazon Prime Original『フリーバッグ』やNetflix『セックス・エデュケーション』といった海外ドラマは、テーマの切り出し方の鋭さはもちろんですが、エンタメとしても緻密に構成されていて、視聴者を引きつけるためのこだわりが詰まっている。テーマ性とエンタメ性のバランスは永遠のテーマかもしれないですが、WDRではなんとか両立したい。次の、新しい何かを作れる場にできればいいなと思います。

――こういう議論をライターズルームに入るとたくさんできるわけですよね。これから脚本家を志す人にとっては貴重な体験になるかと思います。

保坂:選択肢が増えることが重要だと思います。技術の進歩によって色々な撮影方法が試されているわけですから、脚本や企画の開発方法も今までとは違うやり方があってもいいはずだと思います。

――複数で書くというのは、どういったイメージなんですか? 

保坂:まずは一人で企画を考え、パイロット版となる第1話を書くのですが、途中途中で作品をシェアして他の方の意見をフィードバックしながら、書き直していくというイメージです。

――その企画は、ドラマ化されることを前提に書かれるのですか?

保坂:パイロット版が完成したら、NHK局内会議でプレゼンし、企画が採択されたら制作が決まります。それで、仮にAという企画が通って10話作るとなった時に、Aという企画を作った作家さんには、WDRに参加していた方の中から誰と脚本を作るかを選んでいただき、最終的に何人かで分担して書くという流れです。ですので、自分の企画が通らなかったとしても、他の人の企画に参加するチャンスもあります。

――Netflix『全裸監督』の脚本の書き方が、各話を一人の脚本家が書くのではなくて、各キャラクターのシーンや台詞を一人一人の脚本家が担当し、複数で全話を通して書きあげるという形だったそうですが、そういった書き方もあり得るということですか?

保坂:可能性はあります。脚本の進め方は企画が通った方の意見を尊重しながら、改めて決めていくことになるかと思います。

――すでにデビューされている脚本家の方でもOKなので、どんな人が応募してくるのか楽しみですよね。

保坂:経歴や名前などは気にせず15ページの中でみていこうと思っているので、いろいろな方に応募していただけたらと期待しています。

――作品も楽しみですが、WDRというプロジェクトの今後にも注目しています。

保坂:現段階ではどれくらいの方が実際に応募してくださるか分からないので、あまり先のことは言えませんが、第2期が待ち望まれるくらいのアウトプットを出せるようにがんばりたいです。WDRのメンバーに選ばれること自体がその方のキャリアに箔がつくような、そんなグループになることを目指したいと思っています。

▼応募方法
7月1日から公式サイト(https://www.nhk.or.jp/wdr)で受付開始中。
締め切りは7月31日(日)23:59。
応募には、以下の課題脚本の提出が必要。
締め切り間際は回線が混雑する恐れがあるため、ゆとりを持っての提出を。
応募の際には別途掲載する応募規約を必ずご確認いただき、了承した上でご応募ください。

▼課題脚本
・オリジナルの脚本15ページ。
・原作があるものは不可、ご自身お一人で執筆した未発表のものに限ります。
・連続したページであれば、物語の始まりでも途中でも構いません。完結する必要もありません。
WDRでは、「思わずイッキ見したくなる」海外ドラマの脚本を意識して執筆してもらいます。
課題脚本の審査でも、「続きが気になること」を重要視します。
そのためにも、主人公の「目的」や「壁」も分かるようにしてください。
・用紙はA4を横に使用、タテ書き、MS明朝、黒字のみ、字数は自由。 
・最大15ページまで。タイトルページ、人物表、あらすじ等は不要で、脚本本文のみをPDF形式で
アップロードしてください。作品タイトルは、PDFのファイル名として記入してもらいます。
・2次選考では、「課題脚本のリライト」を提出してもらいます。
・NHKのディレクター、プロデューサーが選考します。

▼スケジュール  ※状況に応じて変更する可能性あり。
2022年
7月31日(日):応募締め切り
8月:1次選考・合否連絡
9月:2次選考・面談/課題脚本リライト
必要に応じて3次選考
10月:選抜メンバーの発表、活動開始    
2023年
5月:活動終了
5月以降:企画採択された場合、シリーズ開発(一部メンバーのみ)
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/wdr

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