NHKがエンタメ界に投じた一石 脚本開発プロジェクトWDRの狙いをプロデューサーに聞く

NHKの脚本プロジェクトWDRの狙いを聞く

大事なのは「物語を書きたい」「自分が観たいドラマを作りたい」

――今回、締め切りまでの期間が短いことが意外でした。

保坂:15ページに限定していることもそうですが、限られた時間の中で書いてもらおうと思いました。プロとしてやっていくのであれば、忙しくても15ページであればすぐに書けないと続けられないでしょうし、本気の人で脚本家を目指そうという人なら、この条件で書けるだろうと信じています。

上田明子(以下、上田):今回は15ページをそのまま映像化するというコンクールではないので、未完成でも荒削りでもいいので、自分は「ここが強い」という個性をページの中に出していただけたらと思います。

――普通の賞だと投稿作品のクオリティで判断するのですが、選考基準がだいぶ違いますね。

保坂:作品だけで評価すると、その作品だけで終わってしまう可能性もあると思ってまして。脚本の完成度ではなく、書いた方の強みを知りたいのでこうしました。

――コミュニケーションが苦手な方は、ブレスト会議というと尻込みしてしまいそうですが。

保坂:選抜された方に対しては、僕らが才能を引き出すためのサポートを全力でしていきたいと考えています。ただ、僕はコミュニケーション能力自体は重要だと思っています。どれだけ経験もあって優れた作家であろうとプロデューサーやディレクターと議論しながら作っているので、初稿で即OKってことにはならないので。

――それこそ、坂元裕二さんや宮藤官九郎さんといった作家性の高い脚本家であっても、プロデューサーやディレクターから指摘を受けて脚本を直しながらブラッシュアップさせていくので、他人の意見を取り入れることを、あまりネガティブに捉えないでほしいですよね。

上田:コミュニケーション能力といっても様々で、面白いことを言う能力もあれば、人の話を聞いてそこから自分に必要なものを抽出する能力もあると思うんです。ベテラン脚本家の方と本打ちをしていると「聞く力が凄い」と思う瞬間が多いんですよね。

――ブレストの場で批判されることが怖いと思われる方も多いかと思うのですが?

上田:心理的な安全性を担保した上での議論にしていきたいと考えています。「喋りが面白いこと」と「書くものが面白いこと」はまた別の能力でしょうし、瞬発的に面白いことを言える人だけを求めているわけでもありません。前提として他メンバーへの敬意を持ち続けられる方に集まってほしいと考えているので、成長のチャンスと思って、怖がらずにぜひご応募頂きたいです。

――上田さんが関わっていた「よるドラ」の時は、プロデューサーやディレクターがお互いの企画について意見を交換する「よるドラミーティング」というブレスト会議があったそうですが、その時はどのような感じでしたか?

上田:よるドラの時は企画の提案者が持っていた熱意やテーマの面白さをフックしていくという側面が強かったですね。ブレストには若手プロデューサーとディレクターと、オブザーバーとして先輩のプロデューサーが参加していたのですが、若手と先輩のプロデューサーでは意見が違うことも多かったんですよね。

――そこが面白いところですよね。

上田:先輩たちも「必ずしもこの意見を取り入れる必要はない」というフラットなスタンスでいてくれて、意見を交わす場に上下関係がなかったのは、凄くよかったと思います。

――フラットな人間関係だったわけですね。

上田:それは今回のWDRにも反映されると思います。すべてを受け入れる必要はなく、言われたことの中から自分の企画に良いと思った要素だけを取り入れればいいわけで、自分で取捨選択していける場だと思います。

保坂:ですので、喋りが苦手でも構わないです。大事なのは「物語を書きたい」「自分が観たいドラマを作りたい」という強い思いがある人が来てくれるといいなと思います。

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