『PLAN 75』『冬薔薇』『百花』など話題作に出演 “映画俳優”河合優実の可能性

 さて、『17才の帝国』は放送が終了したし、『ドライブイン カリフォルニア』は舞台なのだから観られる者は限られている。そんな中で河合の姿を確認できるのが映画『PLAN 75』。第75回カンヌ国際映画祭にて、新人監督に贈られる「カメラドール」のスペシャルメンション(特別賞)を受賞した作品だ。本作が描いているのは、75歳以上の人間が自ら生死を選ぶことのできる制度「プラン75」が施行された近未来の日本社会であり、死を選択した者に“その日”が来る直前までサポートをするコールセンターのスタッフ・瑶子を河合は演じている。物語がフォーカスしているのは、「プラン75」を申請せざるを得ない人々と、この制度に業務として関わりながら葛藤する者たちの姿。瑶子の登場は中盤あたりなのだが、死を選ぶ主人公の女性・ミチ(倍賞千恵子)の話し相手という役のため、演じる河合の存在は作品において重要なものだ。ミチと交流を重ねるうちに変化していく内面を、まるで滲み出させるように表現している。白眉なのが、ミチとの最後の電話のシーン。立場的に瑶子はミチに「死なないでほしい」とは言えない。言ってはならない。しかし、その不安定な声と表情には、彼女の本心が見え隠れする。表向きはどうにか平静を保っているが、心ではあきらかに泣いているのだ。声と表情のコントロールがかなり難しいはずだが、まさに妙演と呼べるレベル。『万引き家族』(2018年)で安藤サクラの“泣きの演技”が話題になったように、カンヌ受賞作に河合が刻んだこの“泣きの演技”もまた、世界を相手にしたものだと言っていいだろう。

『PLAN 75』(c)2022『PLAN75』製作委員会 / Urban Factory / Fusee

 今後の河合は、映画『モテキ』(2011年)や『怒り』(2016年)などの名作をプロデュースしてきた川村元気の初監督作『百花』や、『ちはやふる』シリーズの小泉徳宏監督による最新作『線は、僕を描く』、さらには日本国内のみならず海外からも熱い視線を浴びる石川慶監督の『ある男』といった出演作が公開される。メジャーとインディーズの垣根も、国境さえも越えていく河合優実は、ますます愛される存在になっていきそうである。彼女が相手にしているのはすでに、世界だ。

■公開情報
『PLAN 75』
全国公開中
脚本・監督:早川千絵
脚本協力:Jason Gray
出演:倍賞千恵子、磯村勇斗、たかお鷹、河合優実、ステファニー・アリアン、大方斐紗子、串田和美
企画・制作:ローデッド・フィルムズ
製作幹事・配給:ハピネットファントム・スタジオ
製作:ハピネットファントム・スタジオ/ローデッド・フィルムズ/鈍牛俱楽部/Urban Factory/Fusee
(c)2022『PLAN75』製作委員会 / Urban Factory / Fusee
公式サイト:https://happinet-phantom.com/plan75/
公式Twitter:@PLAN75movie

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