『トップガン マーヴェリック』失った命に想いを馳せて アメリカ映画そのものの旋回と反復
反復されるのは世代間で起こる同じ葛藤、同じ克服、同じ栄光であるばかりでなく、『トップガン』と『トップガン マーヴェリック』という2本の作品の36年という隔たりを縮める反復であって、たったいま説明してきたように、西部劇の伝統から綿々とつらなるアメリカ映画の風景そのものの反復なのである。主演のトム・クルーズそしてプロデューサーのジェリー・ブラッカイマー以下、本作の製作陣が墨守しようとするのも、この綿々と続くアメリカ映画の風景そのものである。映画の冒頭でイントロ楽曲が静かに鼓動のリズムを打つのも同じ。まるで燃料が徐々に充填されていくようなリズムで幕開けとなる。そして主人公が夕陽を背景にバイクで基地に到着する。
マーヴェリックは言う。「長いあいだ飛んでいれば、仲間を失うこともある」。幼いころに父を失った息子からすれば残酷な言葉だが、すべての達成は喪失とともにある。マーヴェリックは同僚であり無二の親友だったグース(アンソニー・エドワーズ)を失った。『トップガン』のクライマックスはグースの弔い合戦だった。そして『トップガン マーヴェリック』はアイスマンの弔い合戦となり、また同時に、志なかばで自死したトニー・スコット監督(1944年〜2012年)の弔い合戦でもある。
今回トニー・スコットに代わって監督をつとめたジョセフ・コシンスキーはこうした大規模プロジェクトをまとめる能力の高さを証明した一方で、あたかもトニー・スコットが存命ならこのように続編を仕上げただろうということをきちんと跡付けた仕上がりにもしている。映画のラスト、黒地に白文字で「In memory of Tony Scott」とクレジットされている。つまり私たちは2時間あまりの冒険に魅せられたのちに、最後にはこの「In memory of Tony Scott」という墓標に行き着くのだ。壮大な墓参りとしての映画。グース、アイスマン、トニー・スコット。失った命に想いを馳せながら、冒険は始まり、終わり、そしてまた、なんどでも反復する。
■公開情報
『トップガン マーヴェリック』
全国公開中
監督:ジョセフ・コシンスキー
脚本:クリストファー・マッカリーほか
製作:ジェリー・ブラッカイマー、トム・クルーズ、クリストファー・マッカリー、デヴィッド・エリソン
出演:トム・クルーズ、マイルズ・テラー、ジェニファー・コネリー、エド・ハリス、ヴァル・キルマーほか
配給:東和ピクチャーズ
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