ディズニープラスがついにNetflixを超える? 国内外で今、大きく伸びたワケ
2010年代後半から急激に普及した動画ストリーミングサービスの競争は、激化の一途をたどっている。そんななか、米ディズニー社による最新の四半期収益報告書で、同社のメインとなるストリーミングサービス、ディズニープラスの新規加入者数が他社を凌ぐ伸びを記録したことが明らかになった。これまでNetflixが圧倒的なシェアを獲得してきたこの市場で、なぜ今ディズニープラスが台頭してきているのだろうか。日本国内での状況も踏まえて、同サービスの今後を占ってみよう。
2022年1月~3月には新規加入者数で他社サービスを圧倒
2022年5月11日にディズニーが発表した同年1月~3月の四半期収益報告書によると、同時期のディズニープラスへの新規加入者数は790万人増加したという。この伸びは、他の主要なストリーミングサービスを圧倒。次に多いのは、パラマウント・グローバル傘下のParamount+(パラマウントプラス)で、同時期の新規加入者数が680万人増。その次がワーナー・ブラザース・ディスカバリーが運営するHBO Maxで、300万人増となっている。Netflixにいたっては、20万人減と翳りが見えつつあるのが現状だ。さらにディズニーは、自社の各種ストリーミングサービスの総加入者数が2億500万人を突破したことも発表。これはディズニープラスの1億3770万人と、Huluの4560万人、スポーツ専門のストリーミングサービス、ESPN+の2230万人を合わせた数字だ。同社のCFOクリスティン・マッカーシー氏は、2024年度末で加入者数は2億3000万人~2億6000万人に達すると期待を述べている。一方、現在トップのシェアを誇るNetflixの総加入者数は、2億2164万人。次の四半期(2022年4月~6月)では、さらに200万人の加入者数減が予想されており、すでに3月には、ロシアへのサービス停止で70万人減。このまま行けばディズニーの目算通り、トップの座を譲ることになるかもしれない。
強みはやはり「ピクサー」「マーベル」「スター・ウォーズ」などの人気コンテンツ
この成長の要因について、マッカーシー氏は同時期にピクサーの『私ときどきレッサーパンダ』や、マーベル・スタジオ製作のドラマシリーズ『ムーンナイト』が配信されたことに触れている。ディズニープラスの強みはやはり、ディズニーとその子会社の作品を1つのサービスで観られることだ。これは同時に、ハリウッドで同社が築いた帝国の大きさを感じさせる。
3月11日にディズニープラスで配信が開始された『私ときどきレッサーパンダ』は、2018年に『Bao』でアカデミー賞短編アニメーション賞を受賞したドミー・シー監督の長編デビュー作。ピクサーで初めてアジア系女性が長編作品の監督を務め注目を集めたが、同スタジオの長編映画としては2020年の『ソウルフル・ワールド』、2021年の『あの夏のルカ』につづいて、コロナ禍の影響でディズニープラスがサービスを提供している地域では劇場公開されず、配信のみとなった。また3月30日から配信がスタートした『ムーンナイト』は、マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)作品であり、『スター・ウォーズ』続3部作のポー・ダメロン役などで知られるオスカー・アイザックが主演を務めた。彼の演技が話題となり、これまでのMCU作品をあまり知らなくても楽しめるストーリーでもあったためか、新たなファンを獲得している。これらの作品が配信されたのと同時期に新規加入者数が増加したということは、ピクサーやマーベルというブランドの力であることは疑いようがない。さらに5月27日には、『スター・ウォーズ』シリーズのスピンオフドラマ『オビ=ワン・ケノービ』の配信がスタート。製作が発表されてからファンが首を長くして待っていたこのシリーズもまた、新規加入者数の増加に貢献するのではないだろうか。
ピクサー、マーベル、『スター・ウォーズ』は、言うまでもなくディズニープラスを支える大黒柱だ。特にマーベルのディズニープラスオリジナル作品は、今後のMCU映画シリーズとも深い関連を持っていると考えられ、ファンは同サービスへの加入が必須となる。Netflixもオリジナルコンテンツの製作に力を入れ、そのクオリティで人気を確立してきたが、もともと世界中に熱心なファンのいるマーベルや『スター・ウォーズ』はやはり強い。ディズニープラスは、そのブランド力で激しい競争のなかで急成長を果たしたと言っていいだろう。