『鎌倉殿の13人』小池栄子の笑顔がもたらす久々の穏やかさ 佐藤二朗の流石の“腹黒さ”も

 『鎌倉殿の13人』(NHK総合)第22回「義時の生きる道」。源頼朝(大泉洋)の上洛が決まり、北条義時(小栗旬)は命に従い、随行する。念願であった京へ上った頼朝は後白河法皇(西田敏行)と会談し、今後の世のあり方を思い描く。そんな中、自分たちには利益のない上洛に坂東武者たちは不満を募らせていた。

 第22回では戦とは異なる緊張感をはらむシーンが度々見られた。頼朝と後白河法皇が2人きりで言葉を交わすシーンでは、2人とも落ち着いた佇まい、穏やかな口調でありながら、腹の探り合いをしているようだった。また、不満を募らせる坂東武者たちの姿や、工藤祐経(坪倉由幸)と頼朝への敵討ちを狙う曽我十郎(田邊和也)・五郎(田中俊介)兄弟の登場も、物語の先行きに不安を漂わせる。そして、比企家の地位を盤石にするために行動する比企能員(佐藤二朗)の表情にも、権力闘争が激化する予感がうかがえる。

 能員が時折見せる鋭い眼光には、比企家の存続をかけて常に策をめぐらせている彼のしたたかさが伝わってくる。能員が時政(坂東彌十郎)と直接対立するようなシーンでは、お互いに意地の張り合いをしているようでチャーミングに映る。だが、根が単純で何事もまっすぐな時政に比べると、能員は権力に対する欲望がはっきりと目に見える印象だ。

 範頼(迫田孝也)の館で、範頼は頼朝への不満を訴える御家人たちの声に耳を傾けつつも、彼らに理解を求めた。能員はそんな範頼と2人きりになったとき、「皆、口にはせぬが思っておりますぞ。蒲殿が鎌倉殿であったならと」と口にする。範頼は能員を諫めるが、その後の能員の言動に策略を感じた。というのも、能員は軽く微笑むと「ご無礼いたしました」と非を認めるのだが、その後、酒を口に運びながら、鋭い目で範頼の様子をうかがっている。ほんの数秒の演出だが、あの瞬間、比企家の地位を確固たるものにするための“種”を播いたように感じられた。曽我兄弟が仇討ちの件を能員に明かしたときには、ライバルである北条家が関わってくると知った途端に態度を変えた。彼らの仇討ちがうまくいこうといかまいと、比企家には都合が良いことを察したからだ。能員は「面白いことになってきたわ」ととても楽しそうに高笑いしていた。

 能員は家の安泰のためなら誰でも何でも利用する。本作に登場する損得勘定で行動する人物には三浦義村(山本耕史)も挙げられるが、能員の言動は義村よりもずっと生々しい。あまりにも人間臭いその言動には、憎めなさも感じる。比企能員の可笑しみと腹黒さを両立させた一筋縄ではいかない人物像が魅力的に映るのは、茶目っ気のあるコミカルな演技から、“負”を背負うようなシリアスな演技もこなす佐藤だからこそだと考える。

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