『ちむどんどん』上白石萌歌が魅せた“泣きの演技” 比嘉三姉妹がそれぞれの未来へ突き進む

 NHK連続テレビ小説『ちむどんどん』第39話では、暢子(黒島結菜)と歌子(上白石萌歌)、そして良子(川口春奈)がそれぞれ目の前にある出来事と対峙する姿が交互に映される演出が印象的だった。

 イタリア人シェフ、アレッサンドロ・タルテッリ(パンツェッタ・ジローラモ)がなぜ最後の晩餐に「ピッツァ・マルゲリータ」と答えたのか。いつどこで誰と、そのピッツァを食べたのか。全てを聞くことができなかった和彦(宮沢氷魚)は、再び田良島(山中崇)と、「アッラ・フォンターナ」のオーナーである房子(原田美枝子)の力を借りて、どうにか条件つきで追加取材の許可をもらうことができた。その条件とは、「1960年代に掲載された、ピッツァについて書かれた一つの投書を明日の朝までに見つけること」である。

 早速、和彦と大野愛(飯豊まりえ)と暢子は過去の新聞記事がまとまっている膨大なファイルを開いて、一つ一つ投書を確かめていった。中には沖縄から東京に上京してきた人が執筆したものもあり、暢子は自分の心細い気持ちをその投書に通わせる。一方、和彦は割と諦めモード。そんな彼を「探すしかない! なにがなんでも探して、追加取材して、納得のいく記事書くんでしょ!」と、暢子が励ます。

 前回の第38話でも、彼女はオーディションで歌えない歌子に、励ましの言葉をかけていた。それが田良島の言葉の受け売りだとしても、結構しっかりと姉の務めを果たしている彼女の姿を立派だと感じたが、今回もそういった意味で彼女は周りの人間をちゃんと励ませている。その言葉が力強く感じられるのは、彼女も和彦と一緒になって努力し、「見つけられる」と信じて探している描写があったからこそだ。

 さて、オーディションといえば、歌子は予選の合格通知を受け取る。そこでようやく、母・優子(仲間由紀恵)と良子に歌手になりたいことを話すのだが、事件はその次のオーディションで起きてしまった。また熱が出てしまったにもかかわらず、会場に向かった歌子。しかし、オーディションの最中に倒れて気を失ってしまったのだ。家に帰るまで気を失い続けるなんて、明らかに重病なのではないだろうか。幼少期からずっとことあるごとに熱を出している彼女に、早く大きな病院に行って検査を受けてほしいものだ。しかも、オーディションはその場で失格となってしまった。

「なんでいつもこうなるわけ。良子ネーネーは先生になった、暢ネーネーはコックさんになった。なんでうちは、何にもなれないわけ。病気ばっかして、みんなに迷惑かけて。なんでうちだけ……」

 泣きじゃくる歌子。これまでの放送を振り返っても、確かにずっと彼女はいつも熱を出していて、いつも誰かが彼女の面倒を見てあげなければいけなかった。姉たちが自分の夢を叶えていく姿を、一人後ろに取り残されて見ているしかない彼女の焦燥感と悲痛さ。その切実な悔しさが伝わる見事な“泣きの演技”を上白石萌歌が見せてくれた。

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