『元彼の遺言状』大泉洋の正体がついに明らかに タイトル回収の最終章へ

 篠田(大泉洋)が取り出した偽造の身分証明書と、「殺人犯として警察に追われている」という告白。それでも自分は無実だという篠田を信じると語る麗子(綾瀬はるか)。5月30日に放送された『元彼の遺言状』(フジテレビ系)第8話は、ここまで先延ばしにされてきた“篠田は何者なのか?”という問いにようやく答えが見出され、物語の核心を突く。そして同時に、遺産相続から始まり遺産相続に終わるというひとつの流れを生み出し、クライマックスへと突入していく。

 財界の大物である西園寺製鉄の社長から顧問弁護の依頼が来たと、意気揚々と出掛ける麗子と、それに付いていく篠田と紗英(関水渚)。ところが西園寺邸にたどり着くと、そこには警察が。浴室で社長が死んでいると通報があったというのだ。死亡推定時刻は12時間前。しかし麗子に電話がかかってきたのはほんの3時間ほど前のこと。麗子が違和感を覚えるなか、第一発見者である西園寺の息子・渉(駿河太郎)は、運ばれようとしていた死体を見て、これは父ではない別人の死体であると話す。

 ドロシー・L・セイヤーズの『誰の死体?』をモチーフにした今回の事件。浴室で発見された別人の死体に端を発し、父親が行方をくらましたことから、気が早くも遺産相続の話で揉める兄弟の姿。一方ですぐさま社長の居場所を突き止める麗子。わずか30分で方が付けられたこの一件は、このドラマのすべての発端である麗子の元彼・栄治(生田斗真)の遺産をめぐる森川製薬一族の醜い争いを反芻させるものでありつつ、改めて“金に固執する”主人公のキャラクター性も含めて「お金とは何か?」という問いを持ちかけるものでもあろう。

 そうして「くらしの法律事務所」(あるいは、探偵事務所)における麗子と篠田のバディとしての働きがひとつ振り出しに戻ったところで、豪華なディナーの席で逮捕される篠田。篠田のことを橘(勝村政信)に話した麗子が発する「法の元に裁かれるべき人間は、裁かれないといけない」という言葉は、逆を言えば「裁かれるべきでない人間は、決して裁かれてはならない」ということでもある。無実の罪を背負わされ、身分も偽りながら俗世から隔絶されるようにして生き続ける篠田を、解放させるための助け舟を出した、といったところか。

 それは弁護士として、あるいは探偵やバディとして麗子がしなくてはならないことであり、それがこのドラマの終幕に用意されるべき最も正攻法のパターンであろう。ようやくリーガルドラマと探偵ドラマの両立を兼ねたおもしろさが現れはじめたとはいえ、指名手配されていた殺人犯である篠田、もとい田中守を津々井(浅野和之)の力で保釈させるというのはなかなか強引な感じも否めない。それでも、自ら“金にならない”刑事弁護をすることを宣言する麗子。これはまさに“元彼の遺言状”である「しのだをたのんだ」という言葉が効力を発揮する、実にまとまりの良い終幕への繋ぎである。

■放送情報
『元彼の遺言状』
フジテレビ系にて、毎週月曜21:00~21:54放送
出演:綾瀬はるか、大泉洋、生田斗真、関水渚ほか
原作:『元彼の遺言状』新川帆立(宝島社)
脚本:杉原憲明
演出:鈴木雅之、澤田鎌作
プロデュース:金城綾香、宮崎暖(「崎」はたつさきが正式表記)
音楽:川井憲次
(c)フジテレビ
公式サイト:https://www.fujitv.co.jp/motokare/
公式Twitter:@motokare_cx_
公式Instagram:@ motokare_cx

関連記事