『鎌倉殿の13人』新垣結衣は“仏”のようだった 心は救われたと信じたい、切ない八重の最期

 八重が子どもたちを連れて鎌倉の河原に来ていたとき、鶴丸が流されてしまう。岩にしがみついて泣いている鶴丸を見て、八重は思わず「……千鶴」と口にする。

 鶴丸の名が明らかになったときから、視聴者の脳裏にも頼朝との間に授かった子ども・千鶴丸(太田恵晴)の姿が浮かんでいたはずだ。流人の身だった頼朝の子どもである千鶴丸は川で溺死させられた。八重は身内同士の争いの中で、千鶴丸も家族も失っている。そんな彼女は「せめて子どもたちを救いたい」と身寄りのない子どもたちの世話を始めた。金剛に伝えた「あなたが一番大事」もまことだが、鶴丸に千鶴丸を重ね、無我夢中で川に飛び込み、鶴丸を助けた愛もまた同じ。そして、北条家が一堂に会したときに大姫(南沙良)が口にした言葉もまたまこととなる。

「親の命は子の命」

 慌てて助けに来た三浦義村(山本耕史)に鶴丸をゆだねたとき、否、それ以前に八重が川に飛び込んで鶴丸を助けたときにはもう、八重は鶴丸に命を分け与えていた。鶴丸の無事を見届ける八重の表情は、かつて守れなかった子どもの命をようやく守ることができたという安堵に満ちていた。そして、ふっと力が抜けたような表情を見せ、姿を消した。

 義時や金剛、子どもたちに寄り添い、あたたかく見守ってきた八重の最期はあまりにも悲しい出来事だった。けれど、むごい命のやりとりの中で、八重が最愛の息子と家族を守れなかったという思いを抱えながら生きてきたのかもしれないと考えると、鶴丸の命を救ったことで彼女自身も救われたのではないかと思う。

 政子(小池栄子)の元へ、悲しい知らせを伝えに来た仁田忠常を演じる高岸宏行の泣きの演技にも心打たれる。素直な悲しみの感情が押し寄せてくるように感じられた。義時はまだ悲しい知らせを知らない。

■放送情報
『鎌倉殿の13人』
NHK総合にて、毎週日曜20:00~放送
BSプレミアム、BS4Kにて、毎週日曜18:00~放送
主演:小栗旬
脚本:三谷幸喜
制作統括:清水拓哉、尾崎裕和
演出:吉田照幸、末永創、保坂慶太、安藤大佑
プロデューサー:長谷知記、大越大士、吉岡和彦、川口俊介
写真提供=NHK

関連記事