『鎌倉殿の13人』新垣結衣は“仏”のようだった 心は救われたと信じたい、切ない八重の最期

『鎌倉殿』新垣結衣は“仏”のようだった

 『鎌倉殿の13人』(NHK総合)第21回「仏の眼差し」。源頼朝(大泉洋)は、義経(菅田将暉)を失った奥州に攻め込み、藤原泰衡(山本浩司)を討ち取った。義時(小栗旬)らは、在りし日の義経をしのぶ。そんな中、鎌倉では八重(新垣結衣)が子どもたちの世話に奔走していた。

 物語前半では、後白河法皇(西田敏行)の誘いに乗らず、法皇から気に入られる時政(坂東彌十郎)とのやりとりや、北条家が一堂に会するシーンがコミカルに映ったが、第21回で胸を打つのは、なんと言っても八重が迎える最期である。

 八田知家(市原隼人)が連れてきた孤児の名は鶴丸(佐藤遙灯)という。その名を聞いて八重は、感慨深そうにふっと微笑んだ。まだその場に馴染んでいない鶴丸は、八重に石を投げつけて義時から諌められるが、八重は優しく微笑み返す。義時と八重の息子・金剛(森優理斗)は寂しげにそのやりとりを見つめていた。

 後に金剛は鶴丸と取っ組み合いのケンカをする。金剛は八重から、飢饉で両親を失った鶴丸の気持ちをわかってほしいと言われ、「母上は金剛の母上です。私だけでは駄目なのですか」と思いを口にする。八重は自分の考えを金剛に伝える前に、愛する息子の本心をしっかりと受け止めていた。金剛の手を取り、彼の目を見て「あなただけが一番大事」と言うその姿は子を一心に思う母の愛に満ちている。金剛を優しく抱きしめる八重の眼差しと微笑みは、まさに「仏」のようだ。

 八重の優しさは義時の心も支えている。義時は八重の前で「(鎌倉殿に)言われるがままに非道なことをしている己が情けない」と本心を打ち明けた。そんな義時に、八重は「私はあなたを選び、金剛が生まれたのです」「あなたが今の鎌倉をおつくりになられたのです」とまっすぐ見つめ、自分の思いをはっきり伝える。八重は金剛と向き合うときも義時と向き合うときも、相手を思うがゆえに自分の思いを曲げたり嘘をついたりは絶対にしない。八重は、頼朝を思っていた頃もそうだったが、台詞回しに彼女自身の意志の強さが感じられる。嘘偽りのない物言いは潔く、それが非道な行いに慣れ始めている義時にとっては励みとなり、救いとなったことだろう。「私と金剛をお守りください」「私もあなたをお守りします」というあたたかな響きが心に沁みる。

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