悪役に定評のある高嶋政伸が『ちむどんどん』では“良い人”に? シェフ役に縁のある経歴も
『ちむどんどん』(NHK総合)の舞台は沖縄から東京へ。レストランのシェフになる夢を叶えるため、ついに上京してきた比嘉暢子(黒島結菜)。早苗(高田夏帆)に連れられてやってきた銀座の老舗「アッラ・フォンターナ」で料理長を務めているのが、高嶋政伸演じる二ツ橋だ。
良いとこのレストランなのに、ビニールサンダルでやってきた暢子。しかし、そんな彼女にも嫌味っけない様子の彼。「まさかやー様にとって最高の思い出となるよう、いつも通りのサービスを心がけます」と、少し暢子をいじりつつものちにオリーブオイルの説明を丁寧にしてあげた好印象さがあった。しかし、そんな二ツ橋だが裏があるのではないかと勘繰ってしまう。それは、演じているのが高嶋だからだろう。
高嶋といえば、近年は言わずもがな“悪役俳優”としてその高い演技力を発揮し、人気を博している。たとえば大河ドラマ『真田丸』(NHK総合)で“めっちゃ悪い顔”をはじめとする数々の顔芸を披露した北条氏政役。そして『DOCTORS〜最強の名医〜』(テレビ朝日系)のシリーズでは、屈折しきった性格の病院院長の甥である外科医・森山を好演した。おぼっちゃまで、自意識もプライドも過剰に高く、常に他人を見下すような森山の過剰とも言える怪演っぷりはお茶の間でもかなり愛され、逆に主演の沢村一樹を食ってしまうような存在感を放っていた。そう、近年の活躍を振り返ると「怪演」というワードが誰よりも当てはまる俳優、それが高嶋なのである。
実は彼は最初から、そういった癖強キャラを演じていたわけではない。何を隠そう、NHKの朝ドラ『純ちゃんの応援歌』で俳優デビューを果たした彼は、初主演ドラマ『HOTEL』(TBS系)で「姉さん、事件です」という決め台詞を以ってして、一躍国民的な“弟キャラ俳優”とまで認知されていたのだ。その後も、数多くの作品で「優しくて、温厚で、素直なザ・好青年」キャラクターを演じることで知られていった。
主に自身のスキャンダルが重なったことで世間からの印象も変わり、そのような悪役怪演俳優として開花していったのが2011年頃からと言われているが、実はその片鱗はすでに2000年代後半からあったように思える。それは例えば2007年放送の時代劇の『忠臣蔵 瑤泉院の陰謀』(テレビ東京系)で演じた浅野内匠頭(浅野長矩)役。史実では赤穂事件のきっかけとなる赤穂藩の三代目藩主であり、吉良上野介に切り掛かるという松の廊下刃傷事件を起こし、切腹する。そんな彼は本ドラマでは偏執的強迫症の病的な人物として描かれ、それを高嶋が好演したのである。
続く2008年には、大人気漫画の実写化スピンオフ作品『L change the WorLd』では正真正銘の悪役・的場を演じる。表立っては環境保護団体と謳っている「ブルーシップ」を指揮する人物で、裏の顔はウイルステロによる人類削減計画を実行しようとしたサイコパスなキャラクターだ。特殊メイクも相まって、この時から高嶋は既に『真田丸』で見せたような悪い顔が印象的だった。思えば2003年の『TRICK』(テレビ朝日系)で演じた魯人老人ホームの赤地先生役も、常に笑顔でいることが逆に胡散臭い癖強キャラだった。ニコニコしているけど、実はやばいやつ。映画『暗殺教室』で熱演していた鷹岡明役しかり、高嶋が普段笑顔の絶えないキャラクターを演じていればいるほど、こちらの緊張感が高まってしまうようになった。