『17才の帝国』全5回の物語に熱狂の予感 “経験”は人を腐敗させるものなのか

『17才の帝国』全5回の物語に熱狂の予感

 一方で、「透明な/人々の声を聞き/手を差し伸べる」政治は、これまで存在していたものを「無駄なもの」として容赦なく斬り捨てる一面も持っている。市議会の廃止、市の職員の削減の提案といったものがそれである。「改革」を急ぐ彼らを諫め、なんとか押しとどめようとする平(星野源)。

 真木たちを「子供」、平たちを「大人」と仮定して、彼らを二分するのは何だろう。それは「経験」ではないだろうか。真木の就任演説は、理想的であると同時に、新聞記者・山口(松本まりか)曰く「大人を弾劾し、大人になることを拒む」かのような少年の主張のようでもあった。平や鷲田たちは、真木たちを「経験のない若造」として下に見るが、真木は、「経験」を「人を臆病にしたり人を腐らせることもある」と言う。確かに、経験を重ねることで大人は「間違っていることを間違っていると言えな」くなり、「欲望にまみれ」てしまったとも言える。だからその「経験」を真木たちがAIで補うことで、純粋で理想的な政治を行うことができる。確かにそうだ。しかし、ここで「大人」は反論せずにはいられない。「経験」は、人を腐敗させるものでしかないのだろうか。

 「17才の帝国」の主は永遠に17才ではいられない。「黒くて大きな渦に飲み込まれないようにしないと」いずれ彼らも、彼らがなりたくなかった「大人」になってしまう時がくる。そんな危うさを内包するこの「帝国」は、何を生みだすのか。全5回という限られた時間、熱狂しつつ、注意深く見つめよう。未来に希望が持てない現代の日本を、より良くするためのヒントを探して。

■放送情報
『17才の帝国』
NHK総合にて、毎週土曜22:00〜放送(全5回)
出演:神尾楓珠、山田杏奈、河合優実、望月歩、染谷将太、星野源ほか
作:吉田玲子
制作統括:訓覇圭
プロデューサー:佐野亜裕美
演出:西村武五郎、桑野智宏
写真提供=NHK

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