『ベター・コール・ソウル』から『ブレイキング・バッド』に連なる重要なミッシングリンク

 こうして『ベター・コール・ソウル』から『ブレイキング・バッド』へと連なる重要なミッシングリンクの1つが埋まり、転調の第4話へと物語は続く。監督はなんとキム役のレイ・シーホーンだ。ちょっと“『ブレイキング・バッド』らしさ”を意識しすぎな気もするが、最終シーズンで初監督の彼女を起用できるところにヴィンス・ギリガン組の“厚さ”がある。シーホーンは撮影期間中、共同生活を送っていたというボブ・オデンカーク、パトリック・ファビアンらに愛着を持って演出を施している。だが、やはりこの第4話の重要な見どころはアルバカーキを覆う“悪の法則”に気づき始めたキムの静かな変化だろう。いわばキムを演じるシーホーンの演技プランの上に成り立った初監督なのだ。

 カルテル幹部ラロ(トニー・ダルトン)を弁護したことが知れ渡り、ジミーはアルバカーキ法曹界から閉め出しを食らう。しかし、悪名は無名に勝る。事務所には噂を聞きつけた筋者達が列を成し、ジミーはようやく商売が上向いてきたとご機嫌だ。一方、キムの表情は晴れない。ついに彼女の前に姿を現したマイクによって、ラロが生きていることを知ったからだ。

 第3話以後、不在によってラロの気配は増し続けている。彼は今、いったいどこで何をしているのか? あのガスですらラロを警戒していつになくナーバスだ。彼がため息をつく場面なんて『ブレイキング・バッド』にあっただろうか? 今となっては第2話でコップを落とした場面ですら、これまでになく動揺していたのだとわかる。

 この第4話は、アルバカーキをサイクリングする一組の夫婦から始まる。交通ルールを遵守する模範的市民である彼らが帰宅すると、居間には何台ものモニターが並び、怪しげな男たちが周辺を監視している。夫婦はまるで彼らが目に見えないように振る舞い、世間話を続ける。後に明らかとなるが、この家はガス・フリングの邸宅と地下道で繋がったセーフハウスで、夫妻の態度からするとおそらく相当な謝礼金によってこの秘密を厳守しているのだろう。第2話に登場したケトルマン夫妻に続いて“悪事に手を染める夫婦”というモチーフが繰り返され、『ベター・コール・ソウル』は静かに『ブレイキング・バッド』へのリンクを繋げようとしている。

■配信情報
『ベター・コール・ソウル』シーズン6
Netflixにて配信中

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