『明日』性犯罪の被害者からペットまで 自殺を試む存在すべてを救う死神の物語

 Netflixで配信中の『明日』は人を救う死神のストーリー。ところがあの世の大企業「走馬灯」が対象とするのは人間だけではなかった。生と死がある生物すべてを管理していたのだ。第9話で危機管理チームが自殺を食い止めるのはペットの犬・コン。つまり誰かの飼い犬であるコンが、自ら命を断とうとしていたのだ。「動物がどうして…...?」と疑問が浮かぶも、理由がないのに自殺を選択するものなどいない。

 飼い主は青年キム・フン。彼にとってコンは家族同然の存在だ。動物を飼った経験があれば、フンの気持ちに痛いほど共感できるだろう。死期が近づいていた老犬のコンは、フンを悲しませないために家を飛び出し独りで逝こうとしていた。あり得ない話かもしれないが、“犬だから”ではなく“家族だから”という視点で見ると理解ができる。

 大切な人に負担をかけたくない、寂しい思いをさせたくないと思うのは自然な感情だ。しかも残り僅かの命しかないコンは、フンに“何もしてあげられない”苦しさがあったのだろう。今までみたいに変わらぬ愛を注ぐこともできなくなってしまうのだから。フンにとってコンは家族の一員であり、コンにとってフンはたった一人の家族なのだ。

 そんなコンに自分を重ねていたのは、危機管理チームの新人で半分人間で半分幽霊になってしまったチェ・ジュヌン(ロウン)。昏睡状態の自分を看病して体調がすぐれない母親とお金を稼ぐために休学してアルバイトをする妹を目の当たりにしてまう。元の体に戻るために「走馬灯」で一生懸命働いているジュヌンだが、家族はそれを知らないどころか目覚めるのかすらもわからない状況だ。ジュヌンは家族を見守ることしかできず、家族は祈ることしかできない、お互いにつらい時間を耐えている。

 去ろうとするコンと残されるフンに言葉をかける危機管理チーム長のク・リョン(キム・ヒソン)。残された者は悲しむのも役目であること。恋しさは幸せだった思い出から生まれること。それはコンとの最期を後悔なく過ごせるように背中を押しただけでなく、残された者が愛するものがいなくなっても明日を生きるための励ましのメッセージでもあった。

関連記事