『ちむどんどん』黒島結菜は存在自体が物語になる 羽原大介脚本は“再発見”が醍醐味に

『ちむどんどん』“再発見”が魅力の脚本

 暢子と和彦の幼なじみの関係性は、朝ドラと幼なじみというひとつのパターンではある。同じ沖縄を舞台にした『ちゅらさん』(2000年度前期)では沖縄の主人公えりぃ(国仲涼子/浦野未来)と東京から来た少年文也(小橋賢児/山内秀一)と、まさに同じパターンであった。また『半分、青い。』(2018年度前期)ではヒロイン鈴愛(永野芽郁/矢崎由紗)と生まれた年も日も同じのソウルメイトのような幼なじみ・律(佐藤健/高村佳偉人)が重要だ。彼女の片耳が聞こえなくなったとき、そっと律が寄り添った場面は、子役ながら屈指の名場面である。

 これら過去の朝ドラの例から考えると、暢子と和彦は、やがて結ばれるのではないかと思うのだ。和彦の「大丈夫、僕がついている」は主題歌「燦燦」の歌詞「大丈夫、ほら見ていて」と対になっているように感じる。「ほら見ていて」と言うのは暢子ではないだろうか

 これはお父さんに「見ていて」と語りかけているようにも解釈できるが、和彦が父親のまなざしの代わりになるということとも考えることは可能であろう。

 一方、初恋は実らないのも朝ドラ。恋愛的に結ばれるか結ばれないかは別として、和彦がとても重要な存在であることは確かであろう。和彦のヤマトンチュの視点が、『ちむどんどん』には必要である。ウチナーンチュではない脚本家の羽原大介や制作スタッフがどう取材を深めたところで沖縄のことは旅人目線でしか描けない。史彦や和彦が沖縄に触れて感じること、真摯に歴史を知って学ぶこと、その視点によってしか『ちむどんどん』は作ることはできないだろう。

 その点、羽原大介は『マッサン』(2014年度後期)は西洋人のエリー(シャーロット・ケイト・フォックス)と日本人のマッサン(玉山鉄二)が結婚して互いの文化を尊重しながら歩み、それがウイスキーに結実するという物語を描いているので、異なる文化に対するリスペクトの精神を描くうえで申し分ない。

 思えば、『マッサン』の序盤はエリーの目を通した日本文化や風習の再発見のようなところがあった。そう思うと、やっぱり暢子の少女編の主人公が和彦のように見えてしまうのもまったくの誤解ではないだろう。少女暢子の輝きは、和彦が見たものだったと考えると収まりがいい気がする。

■放送情報
連続テレビ小説『ちむどんどん』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
※土曜は1週間を振り返り
主演:黒島結菜
作:羽原大介
語り:ジョン・カビラ
沖縄ことば指導:藤木勇人
フードコーディネート:吉岡秀治、吉岡知子
制作統括:小林大児、藤並英樹
プロデューサー:松田恭典
展開プロデューサー:川口俊介
演出:木村隆文、松園武大、中野亮平ほか
写真提供=NHK

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