深津絵里、オダギリジョーら“エイジレス”な俳優たちが表現した『カムカム』の100年間

 “中の人”の実年齢差でいえば、オダギリジョーの12歳下、深津絵里の15歳下である濱田岳による、晩年の算太の演技は、文句のつけようがない「老人そのもの」だった。13歳で家を飛び出してから70代で病に倒れ、命果てるまで、風来坊で可笑しくも悲しい人生。登場回数わずか10回とは思えないほどに、算太の生き様は大きな爪痕を残した。

 子役時代からしばしの活動休止を経て、『3年B組金八先生 第7シリーズ』(TBS系)で圧倒的な存在感を示した濱田。彼が演じた狩野伸太郎は中学3年生の男子でありながら、どこか老成したような雰囲気があり、思えばこの頃からすでに“年齢不詳”なオーラを発していたのだった。近年出演作では『おらおらでひとりいぐも』の「寂しさ1」役の名演が印象に残る。年齢も属性も超越して、ついに「概念」の役をも鮮やかに演じ切ったのだった。

 濱田と同じように、子役からキャリアをスタートさせた安達祐実が演じた美咲すみれもまた、演者の“年齢不詳”感が見事にハマった役どころだった。「あの頃は若いだけで価値があったけど、それだけじゃ駄目なんだなって気がついた」というすみれの台詞は、子役の頃から群を抜く演技力で、今も名優の仲間入りをして久しい安達の実像とは大きく異なるのに、なぜか強烈な説得力があった。若年齢からキャリアをスタートさせたがゆえの、並々ならぬ努力が安達自身の役者人生から垣間見えるからだろう。

 尾上菊之助と早乙女太一の存在も、このドラマに一層華やかさを添えている。歌舞伎と大衆演劇、ジャンルは違えど両者共に物心つくやつかずやのうちから板の上に立ち、老若男女を演じ分けてきた。

 早乙女が演じるトミー北沢の「血気盛んな青二才」時代から、間をあけて再登場した際の、ジャズ界のトップランナーの矜持を感じさせつつも「いい感じのおじさん」となった中年トミーへの変化が見事だった。

 初代モモケンと二代目モモケンの一人二役を演じ分けた尾上。時代劇スターというアイコニックな存在でありながら、このドラマの大きなテーマである「引き継がれるもの」というモチーフを、ヒロイン周りから少し離れた場所で、絶えず転がし続けてくれていた。

 こうした“エイジレス”な存在感を放つ俳優たちの快演は、この物語の「連続性」に、さらに説得力をもたらしていた。こんな“名演合戦”を毎朝見ることのできた半年間は、実に贅沢な時間だったとは言えまいか。さて、あと5回。名優たちの力演も相まって、きっと『カムカムエヴリバディ』の最終週は、これまでの朝ドラでは見たことのない景色を見せてくれることだろう。

■放送情報
NHK連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
※土曜は1週間を振り返り
出演:上白石萌音、深津絵里、川栄李奈ほか
脚本:藤本有紀
制作統括:堀之内礼二郎、櫻井賢
音楽:金子隆博
主題歌:AI「アルデバラン」
プロデューサー:葛西勇也・橋本果奈
演出:安達もじり、橋爪紳一朗、松岡一史、深川貴志、松岡一史、二見大輔、泉並敬眞ほか 
写真提供=NHK

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