『妻、小学生になる。』は痛みを抱え続ける全ての人のための物語 最終回の奇跡を願って

 この物語には、多くの死者と生者の交流と、死者への思いが描かれている。例えば、もう一組の入れ替わり、出雲凛音(當真あみ)と吉原(水川かたまり)と友利(神木隆之介)の友情、守屋と幼い頃に亡くなった姉との、プリンを巡るエピソード。そして、「今でもふと突然帰ってくるんじゃないかと思うことがある」海の事故で帰ってこないままの幼なじみに、蓮司(杉野遥亮)が思いを馳せるエピソード。僧侶でもあるマスター(柳家喬太郎)がいる「喫茶たいむ」に集う、見えないけれど確かにそこにいる、彷徨える死者と(稀に生者と)、彼らを想い続ける人々の共存。気づけば「俺の味方なんてこの世に誰一人いない」と言った友利の隣には、彼には見えないけれど、貴恵と吉原が並んで座って、揃って彼を応援している。

 第9話はほとんど最終回と言ってもいいほどの完成度だった。生きている人々にとっては、実質の最終回だった。冒頭は初回の冒頭に重ねられ、2度目の喪失を経験した人々が、一度は同じことを繰り返そうとするが、貴恵が万理華の身体を借りてまで戻ってきて自分たちに伝えたかった言葉の数々を思いだし、ゆっくりと顔をあげて、それぞれの進むべき人生の道を歩み始める。

 一方で新たに始まったのは、死者である、万理華の身体から離れた貴恵を主人公にした物語だ。誰かに触れたくても手は、相手の身体をすり抜けて、決して触れることができない。誰かと目を合わせることも、声を届けることも叶わないということは、なんて切ないことだろう。そして万理華の優しさによって、再び起こった奇跡。再びの生を受け、走る毎田暖乃の笑顔が眩しい。ご褒美のような2度目の奇跡は、私たちにどんなラストシーンを見せてくれるのだろうか。

■放送情報
金曜ドラマ『妻、小学生になる。』
TBS系にて、毎週金曜22:00~22:54
出演:堤真一、石田ゆり子、蒔田彩珠、森田望智、毎田暖乃、柳家喬太郎、飯塚悟志(東京03)、馬場徹、田中俊介、水谷果穂、杉野遥亮、小椋梨央、神木隆之介、吉田羊
原作:村田椰融『妻、小学生になる。』(芳文社『週刊漫画 TIMES』連載中)
脚本:大島里美
プロデュース: 中井芳彦、益田千愛
演出:坪井敏雄、山本剛義、大内舞子、加藤尚樹
製作著作:TBS
(c)TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/tsuma_sho_tbs/
公式Twitter:@tsumasho_TBS

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