『ハリー・ポッターと謎のプリンス』でハリーと正面対決 ドラコ・マルフォイについて考察

 『ハリー・ポッターと謎のプリンス』は、シリーズ最終章の入り口だ。ついに宿敵ヴォルデモート卿(レイフ・ファインズ)を倒すための具体的な方法、「分霊箱」についての話が登場し、幼少期の彼とダンブルドア(マイケル・ガンボン)の出会いが描かれる。さらには、これまでハリー(ダニエル・ラドクリフ)の味方なのか敵なのかわからない、謎多き人物だったスネイプ先生(アラン・リックマン)の正体が、ここから『死の秘宝 Part2』にかけて明かされていく様は涙なくして観られない。シリーズの核心に迫る上で重要な要素の多い『謎のプリンス』だが、そのなかでも最も注目したいのはドラコ・マルフォイ(トム・フェルトン)である。

 前作『ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団』のクライマックスで、ドラコの父であるルシウス・マルフォイ(ジェイソン・アイザックス)がある魔法省神秘部の戦いに死喰い人として参加しアズカバンに収監されてしまったことから、ドラコは16歳にして父の後を継ぐように死喰い人になった。しかし、それは本人の本意ではなく、父親の失敗を埋め合わせさせようとしたヴォルデモートの意向だった。映画の冒頭では、そんな彼の母ナルシッサ・マルフォイ(ヘレン・マックロリー)がスネイプと“破れぬ誓い”をベラトリックス・レストレンジ(ヘレナ・ボナム=カーター)にかけさせられる。その内容から、若くして死喰い人にならざるを得なかったドラコの受けた命が「ダンブルドア暗殺」という、凄まじく重いものだったことが明かされる。

 このとき、ナルシッサが目の涙をためて震える様子が印象的だ。実は彼女、旧姓はブラックで、あのシリウス・ブラックとは従兄弟関係にある。もちろん、ナルシッサの姉であるベラトリックスもそうだ。そして、何を隠そうナルシッサのひいお爺さんにあたるシグナス・ブラックの兄弟アークタルス・ブラックの娘、セドレーラはセプティマス・ウィーズリーと結婚し、その息子がロンの父親であるアーサー・ウィーズリーなのだ。そしてナルシッサの大叔母であるドリア・ブラックは、ハリーと直接的な関係は不明だが、ポッター家の人間と結婚している。端的にいうと、ドラコにとってロンは親戚だし、ハリーも親戚の可能性が高いのだ。

 ナルシッサ自身は死喰い人ではなかったものの、ルシウスへの献身さとブラック家の純血至高の考えは引き継いでいたため、ヴォルデモート側へのサポートをしていた。そんな両親によって、育てられたのがドラコなのである。彼が劇中ハリーたちに吐いたイジメの言葉の数々は親によって刷り込まれてきた思想でしかないのだ。それが顕著に表れているのが、常日頃から彼が口にする「父上は……」というセリフである。偏見に満ち溢れた思想を持つ両親の前で、子は無力だ。自我が形成される前に受容してきた考えが、彼を支配する。しかし、だからこそ、そんな彼が第1作目『ハリー・ポッターと賢者の石』で彼なりに“純粋に”ハリーと友達になりたかったことを考えると、とても切ない。なぜなら、ヴォルデモート支持過激派の両親にとって、ハリーは“あのお方”の力を奪った憎き少年であり、息子の友人としては絶対に認めない存在だから。

 ドラコは決してシリーズの中でヴィランとして描かれてはこなかった。『賢者の石』では友達を断られてしまったことから、彼なりに落ち込んだり傷ついたりしただろう。さらに何が面白くないって、自分のことは断って代わりに友達になったのが、ロン(貧乏)とハーマイオニー(マグル出身)という絶対に相容れない、嫌悪すべき相手だったことである。ドラコのハリーに対する感情はさまざまだ。しかし、初期のものは、小学生が気になる相手を逆にいじめてしまう“アレ”に近い気がする。嫉妬、羨望、尊敬……ただ、僕だってハリーと友達になりたい。

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