『妻、小学生になる。』最終話、家族が過ごした最後の1日 「またどこかで」を心の支えに

 まるで夢を見ているかのような幸せな時間だった。

※以下、『妻、小学生になる。』最終話のネタバレを含みます。

 金曜ドラマ『妻、小学生になる。』(TBS系)の最終回。成仏を間近に控えた新島貴恵(石田ゆり子)にとっての最後の1日が描かれた。その日は、貴恵が亡くなって10年目の結婚記念日。夫・圭介(堤真一)と、娘・麻衣(蒔田彩珠)のもとに、再び白石万理華(毎田暖乃)の協力によって小学生の姿で現れた貴恵は「今日で最後、楽しくさよならしましょ」と笑顔で告げた。

 人生には「ああ、死ぬなら今日がいいな」と思えるほど満たされる瞬間がある。もちろん、そんなタイミングよく人生を終えることなんてできないし、次の瞬間に「いや、まだアレをやり残している」なんて欲が出てきてしまうのだが。

 それはきっと当たり前のように明日も明後日もやってくると思えるから。では、本当に今日が人生最後の1日だとわかっているとしたら……自分なら誰とどんなふうに過ごしたいと願うのか。そんなことを貴恵と圭介、麻衣を見ながら考えさせられた。

 本音を言えば、10年後も20年後もずっと家族と一緒に過ごしたい。いつもどおりに朝を共に迎えて、あーだこーだ言いながらごはんを食べ、休日には畑を手入れして収穫を楽しみに待ちたい。そして娘が成長していくのを見届けながら、その年齢に似合う服やアクセサリーを見繕い、それがやがてウエディングドレスになってくれたら……と、貴恵の夢は尽きなかったはずだ。

 私たち視聴者には、そんな貴恵が夢見た風景がCM直前の提供画面で知ることができた。どんなに求めても絶対に実現はしない、もう一つの世界線。本当であれば、あんな時間を過ごしたかった。逝く側も遺される側も、どんなに幸せな日々を過ごしていたとしても、悔いのない死なんてないのだ。むしろ、幸せで温かな人生こそ、まだまだ見たい風景が広がっていくものなのだから。

 しかし、泣いても笑っても今日が最後の1日。貴恵がどうやって過ごすのかと思えば、生前の暮らしとなんら変わらない。圭介のこれからを心配し、麻衣と蓮司(杉野遥亮)の恋の行方を見届け、家族のためにあくせくと動く。それが新島家の幸せの形だったのだと改めて実感する。

 貴恵が母親として蓮司に伝えた「これからいろいろ大変なことがあるかもしれないけど、思いもよらないことが起こるかもしれないけど、麻衣と一緒に、いろんな幸せをたくさん見つけていってください。娘をよろしくお願いします」の言葉に胸が詰まる。

 大変なこと、思いもよらないこと……。それは誰も想像したくないけれど、ある日突然に予期せぬ形で家族が命を落とすこともあるということ。そんな無念でたまらない死を前に打ちひしがれることもあるということ。それを痛いほど身にしみて知る貴恵だからこそ、今こうして一緒にいる時間を、共に見つけていくことのできる一つひとつの小さな幸せを見過ごさずに生きてほしいと願ってやまないのだと伝わってきた。

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