『カムカムエヴリバディ』第20週はるい編の続き? 明かされた錠一郎の30年間

 ひなた(川栄李奈)と弟の桃太郎(青木柚)が大げんかをしていると、錠一郎(オダギリジョー)がトランペットを手にしてやってくる。錠一郎はマウスピースを口に当てるが、出たのはかすれた音だけだった。NHK連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』が第20週初日を迎え、ひなたと桃太郎は父・錠一郎の知られざる過去を知る。

 第20週初日は、るい編の続きを見ているようだった。

 劇中で錠一郎が「それでも人生は続いていく」と言っていたように、ひなた編になってからもるい(深津絵里)と錠一郎の物語は続いている。しかし錠一郎がトランペットを吹くことを「諦めた」と口にしたとき、その言葉を聞いた深津の顔は“ひなたの母親”ではなく、“るい”の顔つきをしていた。トランペッターだった錠一郎と恋に落ち、夢を失い自暴自棄になった彼を支えた、あの頃のるいを思い出す表情だった。

 錠一郎を演じるオダギリが、何とも言いようのない雰囲気で想いを語るのも胸に響く。京都へやってきてから、穏やかな日々を過ごしてきた錠一郎だが、その胸にはトランペットへの想いが強く残っていた。「ある日突然治ってるかもしれへん思て」と30年間試し続けた錠一郎だが、段々と試す回数が減り、トランペットを吹くときに味わっていた感覚が薄れていく。

「トランペットが……僕に、さよならを言うてる」

 トランペットに向き合い続けた錠一郎らしい表現で、錠一郎はトランペットと別れを告げた。トランペットをしまうその手は名残惜しそうだったし、商店街の福引で子どもがトランペットのおもちゃを選んだとき、わずかに心が動いたように見えたので、決別したわけではないと信じたい。しかし今の彼が出した結論は、トランペットを吹けない事実に踏ん切りがついた、ということなのだろう。

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