『鎌倉殿の13人』に刻まれた芹澤興人の泣き顔と笑顔 “八重の夫”江間次郎の切ない最期

 時政を演じる彌十郎の緩急ある演技は魅力的だ。時政が家族と過ごすときには、彌十郎は少し頼りなく、おおらかな雰囲気をまとう。りく(宮沢りえ)と一緒にいるときに至っては溺愛のあまりデレデレしている。第9回では、そんな時政が武田信義(八嶋智人)にやすやすと取り込まれたり、時政と三浦義澄(佐藤B作)の小競り合いが富士川の戦いで有名な「水鳥の羽音」の逸話のきっかけになったりと、笑えるシーンがいくつもあった。

 可愛らしくて憎めない人物像が印象的な時政だが、戦いの場では落ち着いた様子で刀を振るい、勇猛な姿を見せる。坂東武者としての思いを頼朝に訴えるシーンでは、精悍な佇まいを見せた。「坂東武者にとって何より大事なのは所領と一族。それをまもるためには死に物狂いで戦う」と訴える時政に、頼朝は苛立った表情でにじり寄る。頼朝は追討軍を追い、一刻も早く平清盛(松平健)の首をはねたいのだ。そんな頼朝に、時政は言い放った。

「戦で命を張るのは、わしらなんだ!」

 時政の、頼朝をまっすぐ見据える目、はっきりした物言い、揺るぎない姿勢に、頼朝は思わずたじろいだ。時政の真摯な訴えは頼朝の心に孤独を感じさせることになったが、頼朝は自身が言った「わしと坂東武者たちのかすがいになれるのはあの男しかおらん」の言葉を実感したことだろう。

■放送情報
『鎌倉殿の13人』
NHK総合にて、毎週日曜20:00~放送
BSプレミアム、BS4Kにて、毎週日曜18:00~放送
主演:小栗旬
脚本:三谷幸喜
制作統括:清水拓哉、尾崎裕和
演出:吉田照幸、末永創、保坂慶太、安藤大佑
プロデューサー:長谷知記、大越大士、吉岡和彦、川口俊介
写真提供=NHK

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