3Dアニメ+実写のハイブリッドラブコメ 大ヒット韓ドラ『ユミの細胞たち』が遂に日本上陸
数々の名作・秀作が作られている韓国ドラマから、また新しいジャンルのドラマが生まれた。2021年に韓国のストリーミングサービス「TVING」で配信された『ユミの細胞たち』は、3Dアニメーションのキャラクターと実写ドラマを合体させた斬新な作品。共感度の高い主人公(と細胞たち)の物語に笑ったり泣いたりしたあとに、心理学や行動科学を学んだような気分になる最高のドラマだ。3月4日からAmazon Prime Videoで配信されている。
主人公のユミを演じるのは、『トッケビ~君がくれた愛しい日々~』(2016年)や『ザ・キング:永遠の君主』(2020年)、映画『コインロッカーの女』(2015年)などに出演する演技派キム・ゴウン。製麺メーカーに務めるユミは、仕事も恋愛も平均的な30代女子。新しい恋に出会った彼女の言動は実写、内面で葛藤している細胞たちは3Dアニメーションというハイブリッドで描く。
例えば、ユミの次の一手をめぐり、思うままに行動したい感情細胞と、体面を気にしてブレーキをかける理性細胞が言い争いをする。デートの前には、浪費癖のあるファッション細胞が暴れ出し、肌のお手入れをさぼりがちなユミにフェイスパックをさせるために、美容細胞が他の細胞たちの署名を集めてまわる。細胞たちの中には、3年前の失恋で涙の海に流され行方不明になった愛細胞がいる。愛細胞は、再びユミの中に戻ってくるのだろうか?
脳内で別人格が会議する『脳内ポイズンベリー』(2015年)を彷彿とさせるが、『ユミの細胞たち』では、脳内で暴れる細胞たちが3Dアニメーションで描かれる。実写とアニメーションの融合具合も自然で、細胞たちの喜怒哀楽を楽しんでいると、自然とユミの恋愛成就を応援することになる。自分の何気ない行動も、人格を代表するプライム細胞とその他の細胞たちが大騒ぎして決定しているのかもしれないと思うようになり、さらには他人の不愉快な行動すら細胞の不具合のせいにすることもできる。
一方、ユミが出会うウン(『梨泰院クラス』『マイネーム:偽りと復讐』のアン・ボヒョン)は、表裏のない率直な性格。彼のストレートな言動にも細胞たちが影響していて、頭の中には親父ギャグを得意気に披露する細胞や、性的衝動を爆発させる怪獣のような細胞もいる。つまり、恋愛や人間関係は細胞同士のぶつかり合いで、どんなタイミングにどんな細胞がイニシアチブを取るかによって形勢が変わってくる。アン・ボヒョンは『梨泰院クラス』で演じた極悪キャラのイメージを覆し、キム・ゴウンもコメディエンヌのセンスを遺憾なく発揮、アニメーションキャラクターとの共演という難しい挑戦を成功させている。
アニメーション部分の共同演出にユミと同年代の女性監督が参加し、「無条件にかわいい細胞たち」を描くよう、修正に修正を重ねたという。実写部分とアニメのつながりを自然にするため、「大人の観客が観ても違和感を持たないような」カラーバランスになるようドラマ全体のトーンに気を配った。(*1)