新川優愛に新境地の予感 『カムカムエヴリバディ』と『愛しい嘘』で正反対の演技
NHK連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』と、『愛しい嘘~優しい闇~』(テレビ朝日系)の2作に出演している女優・新川優愛。同じヒロインの同級生役でも優しく控えめな優等生と、中学時代からのマドンナで大人になった今でも高飛車で嫌味な女性という真逆のイメージを演じ、役者としての幅を見せている。そこで新川が昨今で見せる演技の魅力を掘り下げてみたい。
モデル出身のイメージが強い新川だが、ルーツは、小学6年生の時に子役のマネージメントで有名な劇団東俳で、2008年に『長男の結婚』(テレビ朝日系)でドラマ初出演を果たした、キャリアと基礎のある女優だ。新川が注目された2012年のAKIRA版『GTO』(フジテレビ系)で、川口春奈、本田翼、西内まりや、石井杏奈など、ブレイク前夜の同世代の若手女優たちと生徒役で共演し、初回で鬼束を罠にハメる役柄でインパクトを与えた。2013年の『35歳の高校生』(日本テレビ系)でもスクールカースト上位の女子生徒という悪女キャラを演じ、立場が逆転した時の迷いと、そこから成長していく姿に、多感な時期の高校生役のイメージを見せつけた。
昨今は恋愛ドラマなどで大人の魅力溢れる女性を演じることが増え、2020年の『ギルティ~この恋は罪ですか?~』(読売テレビ・日本テレビ系)では周囲の人間に裏切られ、ドロドロの不倫劇に陥る主人公・爽を演じる。悩んだり、怒ったり、泣く演技がとにかく美しく、新川が持つ変わらぬ透明感が、逆境になればなるほど爽の凛とした芯の強さとして際立つ。だからこそ怒りに震えて感情むき出しになった時の演技が迫力あり、夫に浮気を問いただすシーンで「バカじゃないの」と冷静にキレる怖さや、不倫相手と対峙した時に、ストレートな言葉でやりあっていく強さなどがギャップとして成立した。
そのイメージをさらにブラッシュアップさせたのが、現在放送中の『愛しい嘘~優しい闇~』だ。中学の同窓会で当時のクラスメイトが再会したことから始まる悲劇の物語で、新川演じる奈々江は、学生時代から男子に囲まれるようなお姫様的な存在で、大人になった同窓会でも常に上から目線の高飛車な女性。家の事情で地元に縛りつけられていたことで女子アナになる夢にチャレンジできず、同級生の活躍に嫉妬心を抱き嫌味な態度を見せていく。この嫉妬心で心が歪んだ演技が、憎々しくもあるが、心が歪む気持ちも分かり、苛立ちや悔しさからくる悲哀を痛いほど伝わるものだった。