アニメが補完する『ハコヅメ~交番女子の逆襲~』の世界 ドラマとあわせて堪能すべき理由

 シリーズ累計350万部を突破した泰三子による『ハコヅメ~交番女子の逆襲~』。2021年には永野芽郁、戸田恵梨香主演でドラマ化されて話題となった本作だが、1月からはアニメがスタートしている。

 泰三子が元警察官ということもあり、交番勤務の女性警察官の日常がリアルに、かつコミカルに描かれている。原作は高い人気を誇り、ドラマも好評のうちに最終回を迎えた。となると、自然とアニメにも期待が集まる。その魅力について考えてみた。

アニメ版とドラマ、それぞれの構成の妙

 ドラマ版では新人警察官の川合と、元刑事課のエースで川合の指導員である藤の2人が主人公という作りだったが、アニメでは川合がメインとなっている。

 あまりに過酷な労働環境に、警察官を辞めることを決意する川合だったが、藤と仕事をしていく中で、もう少し警察官を続けていく選択をする。現在、アニメは第4話までオンエアされているが、ドラマとはエピソードの流れが異なる。ドラマはその性質上、エピソードをギュッと詰め込んで物語を進めていかなければならないわけだが、「どちらがいい」というわけではなく、「どちらもいい」と感じられる。

 視点の切り取り方は違うが、大切なメッセージは損なわれることなく描かれていく。それぞれの事件には原因がある。原因には社会的背景も加わり、ただ犯人を捕まえればいいというわけではない。その裏にあるメッセージをどのように伝えるかという点は、アニメでも損なわれることはない。むしろ、とても伝わりやすいので、子ども用の教材としてもいいのでは……とまで思ってしまう。

際立つ藤のサイボーグっぷり

 川合は喜怒哀楽が激しく、その表情は観ていて楽しい。警察官はおそらくポーカーフェイスが必要であろうに、何も隠せていないところが良い。

 藤以外で、作中で重要なキャラクターといえば、捜査一係の源と山田だ。源は藤と警察学校の同期で、山田は1期後輩。注目したいのはこのふたりが思いのほか、穏やかだということ。いや、ドラマ版でのアクが強すぎたのか……(もちろん良い意味で、である)。アニメでは、源は第3話からの登場となるが、あまりにも自然な初登場シーンで初回から登場していたのではないかと思ってしまうほどだ。なんというか、変人さが少ない。

 結果、際立つのが藤の超人、サイボーグっぷりだ。

 第1話、最初のパトロールで連続空き巣事件の犯人を推定、任意同行するまでの様子は、笑顔なのに淡々としていて、「絶対にこいつから逃げてはならない」という圧が感じられる。源や山田と一緒にいるときも、感情は出しつつも、どこか少し距離があるような。何を考えているか、わかるようでわからない。藤の声を担当する石川由衣の技によるものなのかもしれない。

 ただ、回を追うごとに、川合への態度が変わっているようにも見える。これが藤と川合の関係性をゆっくりと描いていくものなのだとすると、とても好ましい。

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