中学受験シーズン到来 韓国ドラマ『SKYキャッスル』に学ぶ、受験と子供との向き合い方

「新4年生の準備コースに申し込みたいのですが……」

 去年末に放送されていた『二月の勝者-絶対合格の教室-』(日本テレビ系)を観ていた筆者と息子は、中学受験(中受)に挑戦すべく、進学塾の準備コースなるものに申し込んだ。4年生になる前に、それまで習った算数と国語を完璧にする特別授業だ。

 コロナ禍は、私立中学の利点を可視化したように思う。多くの公立校が各家庭に配慮した公平な対応を迫られてオンライン授業に移行できないなか、私立中学の多くは学校側の準備が整い次第オンライン授業が始まった。差を目の当たりにした保護者は、学力に分断が起きると焦り、それまで中受なんて考えていなかった保護者まで中受の道に進ませた。

 前述の『二月の勝者』は、不安を抱えた保護者の心を掴んで話さなかった。ストーリーとして面白かっただけではなく、通塾や中受にまつわるネガティブな印象を払拭したのだ。塾に楽しい思い出しかない筆者は、自分が受験生だった頃を思い出しながら毎回目頭を熱くした。

 しかし、いざ自分が受験生の親になる段階になって、悩んだ。受験には大金が必要だ。さらに、保護者に相当の覚悟がなければ家庭崩壊もありうるのだ。

 塾の費用は決して安くない。小学4年生から受験まで通わせるとなると、300万円くらい覚悟しておく必要がある。私立に合格しても、勉強についていくために塾に通わなければならないかもしれない。先行きが不透明な未来に不安があるのは、これからを生きる子供たちだけではない。コンスタントにまとまったお金を払い続ける確固たる保証が得られない保護者にも当てはまる。

 だから、進学塾の準備コースを申し込んでもなお、筆者は迷っていた。受験させるべきか、させないべきか。そんなとき、日本よりもシビアな学力社会で知られるお隣韓国のお受験ドラマの存在を知った。2018年放送の『SKYキャッスル〜上流階級の妻たち〜』だ。

韓国社会をリアルに映し出した『SKYキャッスル』

 『SKYキャッスル』は、今の韓国社会をリアルに映し出していると大ヒットしたドラマだ。放送中は、「韓国の激化する受験戦争のリアルを知りたければ、『SKYキャッスル』を観ろ」とまで言われたらしい。

 舞台は、選ばれしエリートしか住むことを許されない高級住宅地「SKYキャッスル」。理想の教育ができる場所として、誰もが憧れる。しかし現実は、他者を出し抜くことだけを考え、子供の進学先でマウンティングをとるようなドロドロした世界だ。親の望みはただひとつ。韓国の最難関大学であるソウル大学の医学部に合格させること。入学資格が学力と人間性の良さになるため、保護者は子供のポートフォリオを充実させるべく必死になる。そして、合格率100%を誇る「入試コーディネーター」を雇うのだ。

 『SKYキャッスル』に登場するのは、教育論が違う5家族で、それぞれに問題を抱えている。だが、共通しているのは、誰もが子供の幸せを望み、教育で悩んでいるということだ。主役のソジン(ヨム・ジョンア)は、娘をソウル大医学部に入れるためならどんな犠牲も厭わない。ソジンの腰巾着であるジニ(オ・ナラ)は、確固たる教育方針はなく、なんとなく息子をエリートに育てないければならないと感じている。お嬢様育ちのスンヘ(ユン・セア)は、子供にエリートの道を進んでほしいと願いながらも、心の奥底では幸せは学歴に比例しないことを理解している。そして、SKYキャッスルの新参者であるスイム(イ・テラン)は、子供の意志を尊重しながら適度な距離感で見守るモットーを持っている。

 筆者がもっとも共感したのが、方針が定まらずフラフラしてしまうジニだった。彼女は、強いものに巻かれろ精神で決して高感度の高いキャラクターとは言えないかもしれないが、受験をさせるかどうかの揺れ動く親心をもっともリアルに語っている。

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