快挙続く『ドライブ・マイ・カー』主演の西島秀俊 『真犯人フラグ』との演技の違いに注目

 こうして、映画『ドライブ・マイ・カー』とドラマ『真犯人フラグ』という、まったく毛色の異なる作品の顔となり視線を集めているのが、現在の西島秀俊というわけである。前者を未見の方は、西島の演技を目にして驚くことだろう。逆に後者を観ていない映画ファンは、同じくやはり驚くことだろう。そのあまりにも大きな違いには、思わず呆気に取られてしまうほど。『ドライブ・マイ・カー』では役の感情を徹底的に抑え、じっくりとスクリーンに映し出される彼の表情の微々たる変化が、179分という長い時間、観客の視線を釘付けにする。他方『真犯人フラグ』での演技は、『ドライブ・マイ・カー』と比べるとまるで歌舞伎のように表情の変化が激しい。発声に関しても感情をそのまま吐き出すような方法で、身振り手振りも大きく、非常にパフォーマンス的。前者がスタティックなのに対し、後者はダイナミックなのだ。

『真犯人フラグ 真相編』(c)日本テレビ

 これが許される現在の西島に、彼がこれまで築き上げてきたものが表れているのだと思う。メディアや、各作品に合わせて、まったく質感の異なる演技を刻んでいるのだ。演劇作品への出演発表こそないが、映画にドラマにと、ここまでバランス良く活動している俳優はほんの一握りだろう。代表作『CUT』から10年の時を経て、次なる到達点へと至ったわけだ。『ドライブ・マイ・カー』はロングラン上映をしている劇場も多々あり、これから再上映を展開する劇場も出てくるのではないかと思う。ここで『真犯人フラグ』での演技との違いを堪能するのも一興だろう。

■公開情報
『ドライブ・マイ・カー』
全国公開中
出演:西島秀俊、三浦透子、霧島れいか、パク・ユリム、ジン・デヨン、ソニア・ユアン、ペリー・ディゾン、アン・フィテ、安部聡子、岡田将生
原作:村上春樹『ドライブ・マイ・カー』(短編小説集『女のいない男たち』所収/文春文庫刊)
監督:濱口竜介
脚本:濱口竜介、大江崇允
音楽:石橋英子
製作:『ドライブ・マイ・カー』製作委員会
製作幹事:カルチュア・エンタテインメント、ビターズ・エンド
制作プロダクション:C&I エンタテインメント
配給:ビターズ・エンド
2021/日本/1.85:1/179分/PG-12
(c)2021 『ドライブ・マイ・カー』製作委員会
公式サイト:dmc.bitters.co.jp

■放送情報
『真犯人フラグ 真相編』
日本テレビ系にて、毎週日曜22:30~23:25放送
企画・原案:秋元康
出演:西島秀俊、佐野勇斗、芳根京子、 桜井ユキ、生駒里奈、柄本時生、柿澤勇人、長田成哉、坂東龍汰、吉田健悟、小林きな子、森田甘路、竹森千人、BOB、青木瞭、中西美帆、渥美友里恵、町田愛、南彩加、遼太郎、原菜乃華、堀野内智、小林優仁、渋川清彦、深水元基、迫田孝也、丘みつ子、浜田晃、小松利昌、戸田昌宏、正名僕蔵、平田敦子、田中哲司、宮沢りえ
脚本:高野水登
音楽:林ゆうき、橘麻美
演出:佐久間紀佳
チーフプロデューサー:加藤正俊
プロデューサー:鈴間広枝 松山雅則
制作協力:トータルメディアコミュニケーション
(c)日本テレビ
公式サイト:https://www.ntv.co.jp/shinhannin-flag/
公式Twitter:@shinfla_ntv
公式Instagram:@shinhanninflag_ntv

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