『カムカムエヴリバディ』るいと錠一郎に訪れた光 2人を繋ぎ止めた“サニーサイド”

 途切れかけた絆をつないだのはラジオだった。ビートルズ(The Beatles)がチャートを独占していた1964年4月、ラジオから流れてきた「On the Sunny Side of the Street」。るいの脳裏に錠一郎と過ごした日々がよみがえる。「アメリカの空の下でトランペットを吹く」という願いは、叶わなくなってしまった。それでも……。いてもたってもいられず、店を飛び出したるい。宿に錠一郎の姿はなく、つけっぱなしのラジオを前にトミー(早乙女太一)が一人たたずむ。医者に行く約束と聞いたるいは、トミーと思い出の浜辺に向かった。

 同じ風景を目にして、なぜ男は死のうと思うのだろう。「暗闇なんや。歩いても歩いても、暗闇しかないんや」。「On the Sunny Side of the Street」は錠一郎にとって甘美な夢の残骸であり、同時に残酷すぎる現実を突きつけるものだった。「サニーサイドが見えへん」。何もかも失ってしまえば生きる意味などない。遠い海の向こうの死に向かって進む錠一郎を、るいは全身で押しとどめる。たとえ希望が潰えても「怖がらんでいい。私が守る」。

 あの日、描いた夢が本物であることをるいは知っていた。「あなたと2人でひなたの道を歩いて行きたい」。あなたとだから、私は生きていこうと思った。それまでの全てを解き放つように泣きじゃくる錠一郎。涙なしに見られない美しい抱擁だった。

■放送情報
NHK連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
※土曜は1週間を振り返り
出演:上白石萌音、深津絵里、川栄李奈ほか
脚本:藤本有紀
制作統括:堀之内礼二郎、櫻井賢
音楽:金子隆博
主題歌:AI「アルデバラン」
プロデューサー:葛西勇也・橋本果奈
演出:安達もじり、橋爪紳一朗、松岡一史、深川貴志、松岡一史、二見大輔、泉並敬眞ほか 
写真提供=NHK

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