宮沢りえの一挙手一投足に魅せられる『決戦は日曜日』 『真犯人フラグ』での今後にも期待

 窪田正孝が主演を務めた映画『決戦は日曜日』にて、奔放な性格で世間とズレた感覚を持ち、政界に無知ながらも熱意だけは誰にも負けない“二世候補”の奮闘ぶりを好演している宮沢りえ。彼女の発する声は聞き逃がせず、その一挙手一投足に魅せられる。宮沢の演技は“最高のパフォーマンス”と呼ぶに相応しいものなのだ。

 本作は、“選挙戦の舞台裏”を描いたもの。『東京ウィンドオーケストラ』や『ピンカートンに会いにいく』など、肩の力の抜けたコメディ映画を手がける坂下雄一郎監督による最新作だ。主人公・谷村勉(窪田正孝)は、衆議院議員・川島昌平の私設秘書だが、川島が病に倒れ、衆議院も解散するところから物語ははじまる。谷村は後継候補として登場した川島の娘・有美(宮沢りえ)の補佐役の業務をこなす日々の中で、常識はずれの彼女に振り回されることになる。

『決戦は日曜日』(c)2021「決戦は日曜日」製作委員会

 坂下監督の作品の傾向について、「肩の力の抜けた」と先に記したが、本作もまさにそう。全体的に脱力しきっている。しかしそればかりでは映画に“締まり”が生まれない。弛緩しきった作品を鑑賞するのには辛いものがある。そこで必要とされるのが緩急のバランスだろう。本作においてこの“急”にあたる部分を担っているのが、宮沢の存在なのだ。

 宮沢といえば、昨年10月から2クールにわたって放送されている『真犯人フラグ』(日本テレビ系)に主要な役どころで出演中であり、12月に放送された『女系家族』(テレビ朝日系)では寺島しのぶとダブル主演。同じく12月には、Bunkamuraシアターコクーンにて上演された“アングラ演劇”『泥人魚』の座長を凄まじい熱量で務め上げていたことも記憶に新しい。彼女の熱のこもった演技は、今作『決戦は日曜日』での川島有美にも通じるものがある。

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