神木隆之介が過ごす実際の撮休は? 『鉄の骨』などWOWOW歴代出演作のエピソードも

 デビューから27年、子役の頃から活躍し続ける俳優・神木隆之介。そんな国民的俳優の知られざる“オフの姿”をクリエイターたちが妄想を膨らませ描くパラレルストーリーのオムニバスドラマ『WOWOWオリジナルドラマ 神木隆之介の撮休』が、毎週金曜23時よりWOWOWにて放送・配信中だ(各話放送終了後、WOWOWオンデマンドにてアーカイブ配信)。『撮休』シリーズの第1弾『有村架純の撮休』、第2弾『竹内涼真の撮休』に続き、神木が主演として各話の監督・脚本家によって創られた“架空の休日”を演じていく。

 今回は、神木に『神木隆之介の撮休』の舞台裏についてインタビュー。そして、東野圭吾のベストセラーサスペンスを映像化した『変身』、池井戸潤原作『鉄の骨』をはじめ、これまでのWOWOW作品への出演についても振り返ってもらった。(編集部)

『撮休』台本へのこだわり「より現実味があってほしい」

『神木隆之介の撮休』(c)WOWOW「神木隆之介の撮休」

――台本をご覧になった感想は?

神木隆之介(以下、神木):各話のテーマやテイストなどが、違いすぎておもしろかったです。すごいなぁって思いましたね。ひとりの人間を主人公にした作品で、まったく被らない物語を作れるんだ、って。もちろん脚本家さんはプロだからできるんですけど(笑)。それぞれのストーリーが違う観点から作られているので、新鮮でした。30分という短い尺の中で、別の起承転結がある。「こういうことが起きるんだ」とか「こういうイメージなんだ、僕って」とか、いろいろ楽しみながら読むことができました。

――「こういうイメージなんだ」というのは?

神木:ふざけない人間だと思われてるんだなって思いました。実際はすぐふざけます、隙あらば(笑)。第7話『友人の彼女』で、親友役の井之脇海くんとの思い出を語っているところは僕っぽいなと思いましたけど、基本的に「まともなことを言っているキャラクターだな」という印象がありましたね。

――演じる上で、難しさはありましたか?

神木:たとえば矢本(悠馬)くんは仲がいいんですけど、僕は僕の役なのに、矢本くんは違う役なんですよね。矢本くんが、台詞で僕に「神木隆之介さんですよね?」とか言って、こっちは「ありがとうございます」とか言うんですけど、「そんな(こと言っちゃって)」みたいな(笑)。お互いニヤニヤしながらやっていましたけど、初対面のふりをしなきゃいけないので、心苦しくて、もどかしくて、そこが一番難しかったです。

『神木隆之介の撮休』(c)WOWOW「神木隆之介の撮休」

――台本ができるまでのプロセスについても教えてください。

神木:最初に制作のスタッフさん方との打ち合わせがあって、どういう人と仲が良いのかとか、実際にはどんな撮休を過ごしているのかとか、趣味の話とかを聞いてもらいました。それから台本の第1稿を見せていただいて、疑問に思ったことを聞いたり、意見を言わせてもらったり。たとえば第7話『友人の彼女』の主人公には“そつなくこなすイメージ”があったけど、僕は別に器用じゃない。本編に、ボウリングですぐにストライクを出して、萩原(みのり)さんから「なんでもできちゃうじゃん」と言われて、僕が「なんでもできるわけじゃない。逆になんでもできる人っていると思う? いたらつまらなくない?」と返すようなシーンがあるんですけど、少し前の台本では「別に好きでなんでもできるわけじゃないよ」というセリフだったんです。でも僕はそんなこと思っていないので、「ちょっと違う表現ってありますか?」と細かいディスカッションをしました。観てくださる方には、ノンフィクションなのか、フィクションなのかっていう曖昧な部分を行き来してほしかったので、なるべく自分の考えだったり、自分だったらこういう言い回しなのかなっていうのを提示させてもらって、よりリアリティが出るようにやっていましたね。なので、脚本には最初から携わっているわけではなくて、途中から(台本に書き加える動作をしながら)「ちょいちょいっ」とやるだけでした(笑)。

――そこで、神木隆之介風味がプラスされていると。

神木:そうです、そうです。脚本家さんからは「直すなぁ、お前」と思われてたかもしれないですけど(笑)。より現実味があってほしいし、より楽しんでもらいたい。それに、せっかくの自分役なので、できるだけ力を抜いてやりたくて、ちょっとこだわってみようかなって。脚本家さん、すみませんでした!

――たくさんの共演者がいる中で、とくに印象に残っている方は?

神木:仲野太賀くんですね。ドラマ『コントが始まる』(日本テレビ系)を撮影している途中で「俺、やるから」と言われて、「ほんとにぃ!? ありがとう、嬉しい! また会えるんだね!!」みたいな感じだったんですよ。でも今回は『コント(が始まる)』とは違う、真面目でほどよい距離感がある関係性だったので、2人でお芝居する時には恥ずかしくもあり、新鮮でもあり、「やっぱり太賀ってすごいなぁ」って思いました。うまいとか、そういう言葉だけでは表現しきれない、本当に惹きつけられる演技をする方だなと。役どころも幼なじみのような信頼関係のある役で、実際も信頼関係ができた上での撮影だったので、やりやすかったですし、楽しかったです。それから、安達祐実さん。「安達祐実がきたーっ! 本物だ!」ってなりました(笑)。

――初共演なんですよね。

神木:(過去に)一回、スタジオですれ違った時に「うぁっ、安達祐実だ!」と思って、すぐに「お疲れ様です!」と挨拶したんですけど、オーラがすごくて恐ろしさを感じたんですよ。「(一緒に芝居をしたら)絶対飲み込まれるじゃん」って。でも、実際はすごく優しい方で、初めてすれ違った時の話をしたら笑ってくれました。それでいて、やっぱり本番になると恐ろしくもあり、すごく魅力的な方だなと思いました。さすが大先輩です。

実際の撮休はどう過ごしてる?

『神木隆之介の撮休』(c)WOWOW「神木隆之介の撮休」

――今作には5人の監督が参加されていますが、瀬々敬久監督の演出はいかがでしたか?

神木:瀬々監督は、ついていけば大丈夫だなっていう安心感がありました。一見、強面なので迫力あるんですよ。だけど、芝居のことを相談させてもらうと(低姿勢で頭を下げながら)「あ、はい。全然それで大丈夫です」って(笑)。優しいんですけど、本当にいい意味で容赦がないから、とても信頼できる方だなと思いました。

――同じく2作品をご担当された、森ガキ侑大監督、三宅唱監督についてはいかがですか?

神木:森ガキ監督は、僕と志尊淳くんで作ったSNSの映像作品でご一緒していて。「ちょっとでもいいから作品でもご一緒したいですね」と話した矢先だったので、すごく嬉しかったです。森ガキさんの作品はドキュメンタリー感があるというか、映像を観ていると、すぐ横でその出来事が起きてるんじゃないか、と思わせてくれる。三宅監督は、等身大に撮ってくれる方でした。あんなに「一緒に同じ方向を向いてるんだよ、俺たちは」と提示してくれる方はなかなかいらっしゃらないなと思いました。今お話しした3人も、天野(千尋)監督、枝(優花)監督も、それぞれ撮り方が全然違うので、演じていておもしろかったです。

――各話のオープニング(マネージャー役の池田鉄洋さんとの会話劇)は森ガキ監督ですよね。

神木:オープニングは台本もなくて、全部任せてもらえました。テーマをイケテツ(池田鉄洋)さんと決めて、言う方向性だけを話し合っておいて、あとは「ハイ!」という感じで撮ったので、楽しかったですね。

――いろんな撮休を経験されたと思いますが、一番羨ましいと思われた撮休は?

神木:第1話の『はい、カット!』です。僕が「俺、吉沢亮だけど」と言ったら、みんなが吉沢亮くんとして僕と向き合ってくれる。そんな最高なことはないですよね。

――吉沢亮さんになりたい?

神木:いや、なりたいですよ。だって歩く彫刻ですよ? ソクラテスと一緒ですよ? 最近は会えていないので、いつも原宿の大きな看板を見て「元気かな~、頑張ってるんだろうな~」と思っています(笑)。

――全8話の中で「本当の神木隆之介はこうだ」と思われたらマズい、みたいな回はありますか?

神木:それは特にないかな。でも第1話『はい、カット!』は、僕だったらシリアスな方向にはいかないです。試しに「マツケンサンバ」を踊ってみたら、みんなついてくるのかな? みたいな(笑)。あとは第2話『嘘から出た何か』も、次の役がピアノを弾く役だから自主的に習いに行くなんて、僕、やったことないですよ(笑)。現実は、もうちょっと怠けていると思います。

――神木さんご自身は、たとえば舞台『パ・ラパパンパン』の休演日などはどう過ごされていましたか?

神木:大阪公演の時だったのでちょっと特殊ですけど、南海電鉄を見に行って、大阪環状線を見に行って、帰りに焼肉を一人で食べて、アニメショップに行って好きなアニメのTシャツを買って帰りました。東京編だとひどいもので、午後に目が覚めて、「ああ、もうこんな時間か」ってお風呂にお湯を溜めて、その間にゲームをして、溜めてることを忘れて「やばいやばい溜めてたわ」とお風呂に入って、ゴロゴロして、「やばい、暗い。店閉まるわ。何かしなきゃ」と思って1人でカラオケ行って、牛丼屋に行くか、コンビニで夕飯を買ってくるかして、ダラダラ食べて、ゲームをやって終わりですね(笑)。

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