『青天を衝け』最終回は吉沢亮の“全力の走り”に注目 大森美香が紡いだ渋沢栄一の情熱

渋沢栄一として走り続けた吉沢亮

 2021年2月からスタートした大河ドラマ『青天を衝け』(NHK総合)が、12月26日に最終回というゴールテープを切る。

 2024年に刷新される新紙幣の一万円札に描かれる人物として有名な渋沢栄一(吉沢亮)。500以上の企業の設立に携わり、日本の近代産業の礎を築いた栄一は「近代日本資本主義の父」と呼ばれている……というところまでは一般的に知られている彼についてのエピソードで、そこから先の人物像はまだ広まっていないのが渋沢栄一という男のリアルな実情であろう。宮本武蔵や坂本龍馬、西郷隆盛といった歴代の大河主人公のようなヒーローでも決してない。脚本の大森美香が目指したのは、偉人伝ではなく人間ドラマだった。

 江戸時代末期に百姓の家に生まれた栄一は、明治時代以降も幾度の“変身”を遂げながら91歳で天寿を全うすることになる。百姓から尊王攘夷の志士、そこから一転して一橋家の家臣/幕臣になったかと思えば、敵方であった新政府に入り、民間の実業家へと栄一の立場はコロコロと変わっていく。そこに一貫してあったのは子供の頃から心に宿していた「日本をどうにかしたい」という情熱。

 「胸がぐるぐるする」といった栄一の口癖や恩人である平岡円四郎(堤真一)から受け継いだ「おかしれぇ」といったセリフも、彼のその情熱を表現したものだ。そして、栄一が情熱を絶やすことのなかったのは、殿と家臣の関係を超えた絆が生まれていった慶喜(草なぎ剛)をはじめ、生涯の相棒と呼ぶ喜作(高良健吾)、温かな愛で栄一を支え続けた妻の千代(橋本愛)、さらに実業界からは友でありよきライバルであり続けた三野村(イッセー尾形)や五代(ディーン・フジオカ)、弥太郎(中村芝翫)の存在が大きくあった。

 最終章の「実業<論語>編」では、最晩年の栄一が描かれる。実業界からの引退を宣言しても、栄一は民間外交としてアメリカ大陸横断の旅へ。喜作、慶喜と大切な人が亡くなり一人になっても栄一は、信念の赴くままに走り続けるのだ。

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