村上虹郎の勇役は全スタッフからの要望だった 『カムカム』制作統括が絶賛する“設計力”

 勇(村上虹郎)から安子(上白石萌音)へのプロポーズが待ち受けていた『カムカムエヴリバディ』(NHK総合)第7週。

 そもそも安子が稔(松村北斗)と結婚できたのは、勇のアシストによるところが大きい。父・千吉(段田安則)に頼み込み、「家のための結婚は俺がするから」と名乗り出て、安子に一度会ってほしいと懇願する。さらに勝手に縁談が進む中、自暴自棄になっている稔の大阪の下宿先に押しかけ、稔に飛びかかって発破をかけ、兄の本心を引き出そうとしていた姿も印象的だった。その様子から、千吉は勇にとって安子が“ただの幼なじみ”ではないということにどうやら気付いていたらしい。

 千吉は未亡人になった安子と再婚するよう勇に促す。どこぞのご令嬢との戦略結婚のための見合い話でも持ちかけられるのかと身構えていた勇からすれば、願ってもない展開だっただろう。それでも、安子から稔への揺るがぬ想いの強さを嫌というほどに見せつけられてきた勇は戸惑う。しかし、生前、兄の前で“安子のことを諦めない”と宣言したことを思い出し、また千吉の「稔じゃったら言うじゃろう。安子さんを任せられるんは勇しかおらんと」という一言が後押しになり、勇は大きな決心をしたのだった。

 制作統括の堀之内礼二郎は、村上虹郎の起用について「勇の魅力を演じるのに最適な役者として、満場一致で決まりました」と明かす。

「勇については一人の人間の“成長”がよく描かれていると思います。元々は好きな子に好意とは裏腹にいたずらをしてしまう子どもじみたところのある野球少年でした。戦争の影響で甲子園が中止となり、その想いの全てを伝えることもなく挫折する。それでも近くで見守り続け、安子とるいが離れ離れにならないように見送って、また迎え入れて支え続けてからの第7週のプロポーズという大きな成長と変化を見事に見せてくれています」

 さらに堀之内は村上の演技について「先々の設計までできている」とし、特に事前に細やかなプランニングのすり合わせなどは行わず、村上自身が「自分で考えて芝居づけしてくださった」と語る。また、勇の変化は上白石演じる安子自身の役割や立ち位置の変化とも密接に連動しているようだ。

「安子が“お母さん”になってから、それに合わせて関係性を考えて下さり、呼応するように2人の関係性や立ち位置が変化していくのが感じられました」

 勇が安子を呼ぶ際の「義姉さん」と「あんこ(安子)」の使い分けにもよく表れており、「安子は義姉であり、るいの母親でもある中で、“義姉さん”と“安子(あんこ)”という呼び名に象徴されるように、その使い分けや距離感の取り方と詰め方の演じ分けが素晴らしいです」と絶賛した。

 そういえば、安子が岡山を去る時にも勇は「あんこ(安子)、どねえしても困ったら帰ってくりゃあええ。そんときはわしがおめぇをもろてやらぁ」と、冗談半分にすることで相手に気負いさせず、だけれどもとびっきりのエールを込めた温かい言葉を送っていた。

関連記事