吉高由里子が振り返る『最愛』との歩み 「楽しんだ分だけ自分の中に深く刻まれていく」

 天真爛漫で屈託のない笑顔を見せる明るい少女の顔から、殺人事件の重要参考人になった女性経営者のシリアスな顔まで、金曜ドラマ『最愛』(TBS系)は俳優・吉高由里子の底力を存分に堪能できる作品に仕上がった。

 そんな『最愛』も残すところ、あと1話。15年前から続く殺人事件の真相と、想いを寄せ合いながらも事件を追う立場にある刑事の大輝(松下洸平)との関係、そして家族としてどんなことをしてでも梨央を守ろうとする弁護士の加瀬(井浦新)の奔走……。

 愛と謎が絡み合い、最後まで読めない展開となった本作。吉高演じる梨央がどのような結末を迎えるのか注目が集まる中、最終回を目前にした彼女は何を思っているのだろうか。『最愛』と共に歩んだ3カ月を振り返ってもらった。(佐藤結衣)

誰しもが蓋をしておきたい箱を持っている

――吉高さんは『最愛』の物語を、どのように感じていらっしゃいますか?

吉高由里子(以下、吉高):もー、苦しい! 1人ひとりの背景が明かされていくたびに「そんなエピソードになってたの?」って驚かされてばっかりで。『最愛』は、各々の愛が同時に並行して動いているお話なので、同じシーンにいてもみんな愛の矢印の方向が違うんですよね。普通にセリフを言っててもその言葉の裏には別の感情があったり、悲しいから悲しい顔をしているわけじゃなくて、笑っているからより悲しい……みたいなところも多かったですね。だから、ながら見じゃなくてちゃんと向き合って観たい作品になったのかなって思いました。

――吉高さんもオンエアでチェックされていましたか?

吉高:『最愛』では自分で自分の表情を見るのが怖くて、現場ではモニターチェックをせずにオンエアを観るようにしていたんです。「こういう顔してたんだ」って自分自身で驚くシーンもありましたね。梨央を演じるにあたって最初「ヘラヘラ封印だよ、笑顔禁止だからね」と言われていたので、もっとキレキレの女社長になってしまうかなと思ったんですが、人間味のあるキャラクターになってホッとしています。

――毎話、放送されるごとに視聴者の中ではSNSで考察や感想のコメントが盛り上がっていましたが、吉高さんにもその反響は届いていたのでしょうか?

吉高:エゴサーチは怖くてしないタイプなんですけど、放送翌日にネットでいろんな記事がアップされていて、そこについたコメントを「ここならまだ傷つかないかな?」とチェックしたりしていました(笑)。あとは、リアルでもいろんな方から「先が気になる」「終わらないで」って連絡をいただいて。なかには「あれ、そんなにドラマ観る人でしたっけ?」っていう友達から連絡が来たのも面白かったです。

――これほど多くの人を夢中にさせた要因はなんだと思われますか?

吉高:誰しもが開けちゃいけない、開けたくない箱があるからじゃないかなと。その蓋をしておきたい箱っていうのは、きっとそれぞれが持っている信念の形だと思うんですけど、そういうのがちゃんと生々しく痛々しく人間味あふれる形で描かれているところに、共感してくれているのかなとも思います。あとは、ちゃんと続きが気になるように作っていますよね。次に繋げていく力がある作品というか。その中心には主題歌「君に夢中」の力もあるなと思っていて。観ている人をちゃんと巻き込んでくれるような求心力のある曲だなって。毎回「今週は誰と夢中になっちゃう?」ってタイミングを予想して「ここでかかるかー!」なんて楽しみながら観ていました(笑)。

――本作はヒット作を手掛けてきた新井順子プロデューサー×塚原あゆ子監督というタッグでもオンエア前から注目を集めていました。

吉高:お二人のファンが多いことから、その期待を裏切りたくないという怯えというか、プレッシャーもあった現場だったんですが、撮影が始まってみたら「みんながこのお二人と仕事をしたくなる理由がわかるわ」と思いました。お話を展開させていく上でも、演出する上でも、絵だけで捉えるのではなく、心の部分を大切にされていて。アドバイスをいただく際にも、1つひとつ心を打ってくるような言葉だったのがすごく印象的でした。

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