5周年を迎えた『アイカツスターズ!』は何が魅力? “変化し続ける”ことで生まれた強さ

 初代『アイカツ!』の魅力のひとつとして「努力がやがて実り、誰もが自分の個性を輝かせるストーリー」を挙げた。『アイカツスターズ!』では、必ずしも努力が報われるとは限らない。それでも、「誰もが自分の個性を輝かせるストーリー」が描かれているという点では、両作は間違いなく通底するテーマを持った作品なのである。

 『アイカツスターズ!』では実力が伴わなかったり、何らかの事情で、アイドルたちが目標を諦めなければいけない瞬間が、何度も印象的に描かれる。しかしそこでアイドルが喫した敗北や、「勝ち負け以上に大切な決断」は、そのアイドルにとって、その後の自らのあり方を決定づけるほどの、重要な意味を持つことになる。

 これまでに計2回行われた公式による『アイカツスターズ!』のエピソード人気投票で、2回とも突出して高い支持を集めた2つのエピソードがある。それは第45話「あこ、まっしぐら!」と第86話「涙の数だけ」。これらはいずれも、目標のための努力を重ね、しかしそこに届かなかった、あるいはその目標以上に大切なもののために奔走したアイドルを描いたエピソードだ。

 アイドルたちの選択による結末が、残酷なほど白黒が付くものとして描かれるからこそ、そこで見せたそのアイドルだけの矜持が、ハッキリと現れる。それもまた「自分の個性を輝かせる」ことのひとつの形であると『アイカツスターズ!』は示した。これは「(前作と比較して)残酷な世界」だからこそ描き切れたものであろう。前作とは違った作風だからこその描きに胸を打たれた視聴者がたくさんいたことを、前述の2つのエピソードへの支持が物語っている。

歴代シリーズプレイバック!『アイカツスターズ!(2016年4月~) ver.』

 「アニメディア」2021年12月号に掲載されたインタビューにて、バンダイナムコピクチャーズの伊藤貴憲プロデューサーは、本作の制作当時のことを振り返り、「悩んだときはより攻めている方を選んでいくような雰囲気と勢いで作り上げていった」と発言している。

 長期にわたって展開されるシリーズ作品には、時代やニーズに合わせた、絶え間ない変化が必要不可欠だ。もし『アイカツスターズ!』がもっと前作に近い、「守りに入った」作風だったとしたら、その後のシリーズは変化の幅の狭いものになっていたかもしれず、そうした場合、アニメと実写の融合というこれまでにない試みで制作された最新作『アイカツプラネット!』も生まれなかったかもしれない。

 『アイカツスターズ!』は、『アイカツ!』シリーズが「変化し続ける」ための基礎を築いた作品でもあったと言える。それは作中のアイドル同様、本作とその制作に関わった人たちが、前作に追従するのではなく、「自分だけの矜持」を示す道を選んだ結果でもあるのだ。

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