『SUPER RICH』衛の生涯が教えてくれたこと あなたにとっての“スーパーリッチ”は?

 真のスーパーリッチとは。この作品が全11話を通して描いてきた「お金」の価値と意義を捉え直すラストで『SUPER RICH』(フジテレビ系)の最終話は幕を閉じる。これまで歩んできたスリースターブックスの社員一同、そして衛(江口のりこ)と優(赤楚衛二)の穏やかな表情を前に、苦楽を共にした仲間の成功を見ているかのような気持ちになった。

 聡美(松嶋菜々子)は余りある資金でスリースターブックスの株を買い占め、衛の代わりに自分の息のかかった空(町田啓太)を新たなCEOにしようとしていた。しかしその後、空が聡美と手を組んだのは仲間を守るための作戦だったと判明する。この状況に、スリースターブックスはホワイトナイトを探しだすことで窮地を脱しようと試みるも、苦戦。そこで衛は「情に訴える」作戦で聡美を欺き返した。衛は、社員を守るために自ら退任し、持ち株を売却するので1カ月の猶予をくれるよう聡美に頭を下げる裏で、作品の権利を作家に移すことで会社自体の価値をなくしてしまう。さらに衛は、新たな会社を立ち上げ社員を一気に引き抜き、作家も取り戻したのだ。機転の効いた方法でピンチを切り抜けた衛らは、新たな会社での新たな船出となった。

 衛が見つけた真の“スーパーリッチ”は、優と共に暮らし、大切な仲間と仕事をし、そして温かいベッドで眠るというものだった。一見何気ないことのように思えるが、毎日これを実行するとなると相当なパワーがいることだろう。それはこれまで『SUPER RICH』が描いてきた人間関係や、恋愛のいざこざからも見てとれる。衛はこれまで家族を失い、何度も裏切られながら会社を経営し、優と出会ってやっと心落ち着ける居場所を見つけた。

 一方の優も、実家の事業のせいで貧困に悩まされながら暮らしており、お金に困らない暮らしをするまでにはかなりの時間と労力がかかったのだ。それほど苦労をしてきたふたりだからこそ、並んでラーメンを食べるというひと時さえ特別なことのように見える。決して高級な食事ではない。しかしふたりが心の底から満たされていることは言うまでもないだろう。衛の見つけた“スーパーリッチ”はお金だけじゃ解決できない「充足感」が含まれているのだ。「お金はなんぼあってもいい」という言葉は事実だろう。TOBのことも含め、衛と優は第1話から最終話に渡るまで何度も金銭面で苦労し、苦渋の決断を強いられてきた。しかし、お金だけがあれば幸せになれるわけではないということを、衛の生涯の一部を描くことでこの作品は教えてくれたように思う。

関連記事