フリーランスの俳優が活躍する時代? いま求められる“新しい働き方”

 ここ数年、テレビドラマへの出演が一気に増えた安藤政信もフリーランスだ。かつては映画をメインフィールドとし、スローなペースでの俳優活動を展開していただけに、最初はとても驚いた。多くの視聴者にとっては、話題となった『ボイスII 110緊急指令室』(日本テレビ系)で演じた白塗り男の役が記憶に新しいところだろう。筆者は彼のフリーでの活動について質問をしたことがあるのだが、とてもポジティブな言葉が返ってきたのが印象に残っている。安藤は、「これまで以上に自由に動くことができるようになったと感じています。これまでお世話になってきた事務所の人たちとも交流はつづいているし、むしろ辞めてからのほうがいい関係性を築けていると思っています。確かに、フリーという立場は不安なことが絶対にある。クリエイティブの世界は無限ではないし、競争もある。しかも、イスがひとつしかないことも多い」と口にしたのだ(参考:初監督に挑んだ安藤政信が語る、デビュー25年で辿り着いた“仕事の流儀”「やればやるだけイスは増える」 - QJWeb クイック・ジャパン ウェブ)。しかも彼はその“イス”に座る自信があるどころか、「やればやるだけ、イスが増える」と笑顔で続けた。これは安藤政信流の“仕事術”であるのと同時に、フリーランスという働き方における至言なのではないだろうか。

 公開中の『ONODA 一万夜を越えて』で主演を務めている遠藤雄弥も、つい最近フリーになったばかりだ。同作はカンヌ国際映画祭でも上映され、大きな話題を呼んだ。これまでに映画にドラマ、舞台にと、かなりの本数の作品に出演してきた遠藤だが、やはり世界を相手に自身の力を証明できたからこそ、新しい環境に身を移す踏ん切りのようなものが生まれたのかもしれない。そもそもコロナ禍とは関係なく、より自身のスタイルを確立させたい者たちは独立し、“個”での活動へと移っていく印象がある。例えば、森山未來や加瀬亮、米倉涼子などがそうだ。“個”での活動は、それまでとどのように違ってくるのか。

 筆者もフリーで文筆業を営んでいるが、自分の裁量で仕事ができるのがフリーランスで働く者の特権だ。働きたいときに働きたいだけ働き、休みたいときにはしっかり休む。後ろ盾がないのはやはり不安なものの、自分のペースで、より自分らしくあるためには、フリーランスという働き方はいまの時代に適しているように思う。一口に「俳優」といっても、その仕事への取り組み方はさまざまだ。旧来のシステムに囚われず、「フリーランス」の者たちが伸び伸びと活動できる環境がより整っていくことを願うばかりだ。

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