『カムカムエヴリバディ』“想い”も“言葉”もすべてがつながっていく見事な構成

『カムカムエヴリバディ』の見事な構成

 稔のことを諦め、そして大好きな祖父が亡くなってしまったとショックなことが続く安子。思わず彼女の心が大丈夫か心配してしまったが、安子は強かった。街の中で軍服を着る、稔くらいの年の男の子とすれ違い、息子に思いを馳せて「たちばな」に足を運んだ千吉(段田安則)。そんな彼が誰かも気づかずに、安子はいつも通り笑顔で丁寧な接客をした。そして、おはぎが出せない変わりに取っておいた貴重な砂糖と小豆でこさえたお汁粉を千吉に出す。そして、「はやくお元気になってくださいね」と言うのだ。思い出されるのは、亡くなった杵太郎が腰を痛めて寝込んだ時、安子が祖母のひさ(鷲尾真知子)に「お汁粉作ってあげて」と言ったのを、杵太郎が「何よりの薬じゃ!」と大笑いした姿。自分がどれだけ傷つき、失意の中にあっても、他人のことを気にする安子に胸を打たれる。それは、勇も同じだ。

 自分がずっと好きでいた安子に、ただ幸せになってもらいたい。稔に馬乗りになって殴りながら奮い立たせようとしたり、父に「家のための結婚は、わしがするから。せめて安子に会って」と直談判したり。自分の抱える傷はさておき、誰かのためを思って行動する2人は似た者同士かもしれない。

 そして安子は「(稔は)もう私には関わりのない人です」と言ったが、みんな全て関わっているのだ。杵太郎の旅立ちに履かせた足袋は、雉真繊維のものであり、それは千吉にとっての原点だった。安子が振る舞ったお汁粉は、杵太郎の菓子作りの原点だった。全ては、巡り巡って関わり合っている。そして最後まで千吉の正体を知らずに店先まで見送った安子の気持ちは千吉へと巡ったはず。そして千吉から、稔へと続くのであれば。頭取の娘と祝言をあげるため岡山に向かう稔の折れた想いも、もしかしたら報われるのかもしれない。

■放送情報
NHK連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
※土曜は1週間を振り返り
出演:上白石萌音、深津絵里、川栄李奈ほか
脚本:藤本有紀
制作統括:堀之内礼二郎、櫻井賢
音楽:金子隆博
主題歌:AI「アルデバラン」
プロデューサー:葛西勇也・橋本果奈
演出:安達もじり、橋爪紳一朗、松岡一史、深川貴志、松岡一史、二見大輔、泉並敬眞ほか 
写真提供=NHK

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