『ハンドメイズ・テイル』S4が描いた、女性の“怒り”への対応 ジューンに起きた変化とは

“母親”としての責任とアイデンティティ

 シリーズを通して、ジューンはあくまでも「娘のハンナを取り戻す」ことを目的にしている。またシーズン2で出産したニコールはすでにカナダへ脱出させ、彼女の夫ルーク(O・T・ファグベンル)に育てられていた。今シーズンでニコールに再会した彼女は母親としての役割、つまり、そばにいて守ってやることを果たせるよろこびを感じている。そしてハンナに対しては、守ってやれなかったこと、いまだに救い出せていないことに強い罪悪感を持っているのだ。シーズン4では、そばにいるニコールと離れているハンナとの対比を通して、彼女の母親としての面を強く描き出した。ジューンにとって“母親であること”はアイデンティティの一部だ。ハンナをギレアドに残したままの彼女は、そこから完全に脱出したとはいえない。

 『ハンドメイズ・テイル』シーズン4では、女性のさまざまな“強さ”や、母親としてのアイデンティティなどを描いた。しかしやはり特にフォーカスされていたのは、“怒り”への対応だ。“怒り”を押さえ込み、なかったことにするのは健全ではない。しかしそれに支配されて、道を誤ってしまうこともあるだろう。

 衝撃の結末を迎えた最終話でなによりも印象的だったのは、元侍女たちがフレッド・ウォーターフォード(ジョセフ・ファインズ)に制裁を加える場面で流れたBGMだ。シーズン1第1話のエンディングと同じ、レスリー・ゴアによる「You Don't Own Me」。シーズン1では、ギレアドに来たばかりのジューンたちが、その厳しい環境に抵抗しようと必死にもがいているように聞こえた。しかしフレッドに“ギレアド式”の罰を与える彼女たちは、社会的な倫理規範に対しても「私に指図しないで」と言っているようだった。ギレアドは、ジューンをはじめとする彼女たちを変えてしまった。彼女たちは、怒りに支配されて道を誤ったのだろうか。それが今後の物語にどう響いてくるのかはわからないが、シーズン5への更新は決定しているので、楽しみに待ちたい。

■配信情報
『ハンドメイズ・テイル/侍女の物語』
Huluにて、全シーズン独占配信中
原作:マーガレット・アトウッド『侍女の物語』(早川書房)
出演:エリザベス・モス、イヴォンヌ・ストラホフスキー、ジョセフ・ファインズ、マックス・ミンゲラ、マデリーン・ブリューワー、アレクシス・ブレデル、アン・ダウド
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