『青天を衝け』吉沢亮VS中村芝翫、白熱の長尺シーン 決定的に異なる栄一と弥太郎の思想

 大河ドラマ『青天を衝け』(NHK総合)第34回「栄一と伝説の商人」では、ついに栄一(吉沢亮)と岩崎弥太郎(中村芝翫)が初対面を果たす。

 芸者を大勢集めた宴席での2人の対面は、実に8分以上にも及ぶ長尺のシーンである。誘ったのは弥太郎から。東京商工会議所の設立に栄一から参加を呼びかけられていた弥太郎は、実業家として信頼する五代(ディーン・フジオカ)の後押しもあり、栄一に興味を抱いたのだ。

 栄一と弥太郎は百姓の生まれであり、武士の理不尽さに憤りを覚え故郷を飛び出していったという共通点がある。そして、商業の力で日本を一等国にしなければならないという思いも同じ。しかし、根本的な考え方は全く違っていた。

 激論へと発展していくその構図は「栄一 VS 弥太郎」。強い人物が上に立ち、その意見で人々を動かしてこそ、正しい商いができるという弥太郎の考えに対し、栄一は多くの民から金を集めて大きな流れを作り、得た利でまた多くの民に返し多くを潤す、合本の制度を広めることを押し通す。

 栄一の表情が曇りだすのは、「金は大事」という話題から弥太郎が西南戦争で漁夫の利を得ていたことを明かしてからだ。だんだんと栄一の眼光は鋭くなっていくが、弥太郎の表情にはどこか余裕を感じさせる。さらに考え方の違いをはっきり浮かび上がらせたのは弥太郎の「貧乏人は貧乏人で勝手に頑張ったらえいけんど」という言葉。第34回では栄一が千代(橋本愛)を連れて養育院に足を運ぶシーンが描かれており、「貧しい者が多いのは政治のせいだ」という栄一のセリフもある。

 そのような軋轢が生じていく中で、弥太郎は不気味なほどに自身の感情が高めていく。「わしら才覚のあるもん同士でこの国を動かすがじゃき」と栄一を説得するシーンの威圧感たるや。演じる中村芝翫による歌舞伎役者としての芝居が如実に活かされた場面だったと言えよう。

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