『フレンチ・ディスパッチ』が米興収で新記録を樹立 『DUNE』は首位でも厳しい道のり?

 10月22日に全米でウェス・アンダーソン監督の最新作『フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊』が公開され、新型コロナウイルス禍における、劇場1館あたりの平均興行収入の新記録を樹立した(参照:Box Office: ‘The French Dispatch’ Sets Pandemic-Era Record Theater Average、Box Office: ‘Dune’ Worms Its Way to Strong $40.1M Opening Despite HBO Max Play)。

 『フレンチ・ディスパッチ』は、アンダーソン監督にとって『犬ヶ島』(2018年)以来となる新作映画。14市場の52館で公開され、3日間の初動成績は130万ドルとなった。平均すると1館あたり2万5,000ドルで、10月1日全米公開の『ヴェノム:レット・ゼア・ビー・カーネイジ』の1館あたり2万1,309ドルを超える数字となっている。

 本作は今週末、10月29日に全米600館以上にて拡大公開され、その後も上映館を増やしていく予定。大手スタジオによる話題作にも、まずは一部劇場で公開し、徐々に公開規模を拡大するケースがしばしばある。従来の場合、こうした作品は初動時点で1館あたり7万5,000ドルを稼ぎ出せれば大成功、10万ドルを超えるケースはごくまれと考えられてきた。

 しかし2020年初頭からのコロナ禍によって、従来の基準はまったく判断材料にならなくなった。今回、『フレンチ・ディスパッチ』が平均2万5,000ドルという成績を記録したことは、スタジオや映画館にとっても大きな喜びだったようだ。配給のサーチライト・ピクチャーズは「(コロナ禍の)1年半を経て、アートハウスや独立系映画館にウェス・アンダーソンというスーパーヒーローが現れた」とコメントしている。

 『フレンチ・ディスパッチ』は、特にニューヨークやロサンゼルス、シカゴ、サンフランシスコなどで優れた成績を記録。映画館へ出かけることに懸念を抱いていた大人の観客たちを劇場に呼び戻したほか、アンダーソン作品のファンではない観客にも訴求したとみられる。

 また米国では、同じく10月22日に『DUNE/デューン 砂の惑星』も劇場公開を迎えた。日本を含む海外での公開が先行する形となったが、米国でも週末興行収入ランキングで第1位を獲得する大ヒット。初動成績は全米4,125館で4,010万ドルとなった。

『DUNE/デューン』は『ゴジラvsコング』(2021年)の3,170万ドルを超え、2021年のワーナー・ブラザース作品として最高のスタートを達成。ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督作品としても過去最高の滑り出しとなっている。なお、海外興行収入は1億8,060万ドル、世界累計の興行収入は2億2,070万ドルだ(参照:Box Office Mojo、2021年10月25日13時40分時点)。

 しかし『DUNE/デューン』に関してヒットの判断が難しいのは、本作が米国ではHBO Maxにて同時配信されているからだ。また、製作には1億6,500万ドルが費やされたほか、広報・宣伝費もかかっているだけに、コストの回収という観点では厳しい道のりが想像される。

 そのほか公開2週目の『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』は世界興収で5億ドルの大台を突破し、5億2,540万ドルを記録。3週目となる『ヴェノム:レット・ゼア・ビー・カーネイジ』も世界興収3億5,000万ドルを達成するヒットを継続している。『DUNE/デューン』がこれらの作品にどこまで迫れるか、そして『フレンチ・ディスパッチ』が今後どんな推移を示すのかを見守りながら、まずは映画館業界が順調に回復しつつあることを喜びたい。

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