『二月の勝者』柳楽優弥演じる黒木の名言に心打たれる 子役キャストにも注目

 新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、およそ1年越しでようやく初回放送日を迎えたドラマ『二月の勝者ー絶対合格の教室ー』(日本テレビ系)。“最強で最悪な”スーパー講師・黒木蔵人(柳楽優弥)が、成績不振の中学受験塾「桜花ゼミナール」の立て直しをはかる本作。高瀬志帆による人気漫画を原作に、細かな設定には少々の変更を加えているものの、キャラクタービジュアルや作品が持つ温度感、テンポを忠実に再現しようという姿勢、敬意を感じる実写化だと感じた。

 作品の要ともいえる生徒役は、かつて『Mother』(日本テレビ系)で芦田愛菜を発掘したプロデュースチームが1年以上の時間をかけて選出。300人以上が参加したというリモートオーディションを経て選ばれた精鋭だ。田中絆菜や市川ぼたん、羽村仁成(ジャニーズJr.)らが名を連ねる。

 第1話のメイン生徒は、4年生からの入塾がベターな中学受験塾に、6年生での入塾を検討しているサッカー少年・三浦佑星(佐野祐徠)。母親(西田尚美)は、入塾説明会での黒木の言葉に感銘を受け入塾を望むが、サッカーチームのコーチである父親は、サッカー選手として伸び盛りの今ではなく、高校受験をすれば良いと意見が対立する。当の佑星も、入塾前のクラス分けテストにて偏差値40という結果。塾に乗り込んできた両親に対し、黒木は根拠に基づいた理論を展開していく。

 受験とサッカー、佑星の気持ちがどちらにあるのかが、終盤まで読めない。両親どちらの期待にも応えたいとする優しい子だ。入塾を賭けた黒木とのリフティング勝負に負けたとき、父親に何かを言いかけ、言い切れなかった顔は忘れられない。帰宅するなり、父親の気持ちを慮る佑星。そんな彼に、父親がかけた言葉は「よく頑張ったな」。成長を喜び、我が子の未来のために決断できる父親もまた、優しかった。リビングにはサッカーゴールと、たくさんのユニホーム。佑星がたくさんの愛を注がれて育っただろうことは一目瞭然だ。

 入塾が決まったことを、嬉しそうに佐倉(井上真央)に報告する佑星の瞳はきらきらと輝いていた。テストの際に黒木から言われた言葉が本当に嬉しかったのだと笑顔を見せ、受験への意欲ーー佑星自身の意思を初めてその口から聞くことができた。点数こそ及ばずとも、思考のあとがありありと残る佑星の答案を見れば、彼が学校で1番の成績であることも頷ける。そうしたところを見逃さないのが、黒木という男だ。

 黒木が、佑星に告げた言葉ーー「粘って頑張った経験のある人は強い」。これぞ、今週の金言ではないだろうか。じっくりと人生を振り返れば、何も頑張らなかった人などいない。この2年を振り返っても、みなよく粘ったではないか。受験を控える者やその家族だけではなく、生きていく上で自分を奮い立たせてくれる、優しい言葉だと思った。

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