スーパーマンがバイセクシュアルに アメコミヒーロー界におけるLGBTQのこれまでと未来

実は多い、アメコミ界のLGBTQキャラ

なぜLGBTQのキャラクターが必要なのか

 『Superman: Son of Kal-El(原題)』の脚本を担当しているトム・テイラーはこの件について、自身のTwitterに「私はずっと、誰にでもヒーローが必要だし、誰もがヒーローに自己投影していいんだと言いつづけてきました」と投稿している。そして今回、世界最強のスーパーヒーローに共感できる人がさらに増えた。

 スーパーヒーローの物語では、彼らがアイデンティティや自分の存在意義について苦悩する姿が描かれることが多い。「自分は何者なのか」。これは、現実を生きる私たちも直面する問題だ。特にコミックのメイン読者層である少年少女は、こうした葛藤の真っ最中にいるだろう。80年代~90年代ごろまで、フィクションに登場するLGBTQのキャラクターたちは“普通ではない”存在として不当な描かれ方をしてきた。それを観た子どもたちは同じ価値観を持つようになる。そして当事者の場合、「自分は普通ではない」と考えるようになってしまう。これはとても悲しいことだ。しかしそんなとき自分と共通点のあるヒーローがいれば、そのキャラクターに共感することができ、ロールモデルにできる。同じような人がほかにもいるとわかるだけでも、光が見えてくるだろう。『ブラックパンサー』や『ワンダーウーマン』の大ヒットが示すとおり、私たちは自分と同じ姿のヒーローを求めているのだ。

 アメコミの世界でLGBTQのキャラクターがすでに浸透しつつあるなか、今回の発表がこれほど注目を集めたのは、カミングアウトしたのがほかならぬ“スーパーマン”だからだ。誰もが知っているスーパーヒーローがLGBTQコミュニティに仲間入りしたことで、勇気づけられる子ども、そしてもちろん大人も多いだろう。今後もLGBTQのキャラクターは増えていくだろう。もちろんそれ以外のマイノリティ・キャラクターも増えていくことが期待される。さまざまな立場のキャラクターがいることで、その視点でしか語れない物語が紡がれていく。それはさらに多くの人々が楽しめるものになり、コミックの世界を豊かにしていくだろう。

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