『日本沈没』小栗旬演じる天海は策士な主人公? 野心的なリメイクを施したドラマに
原作にないオリジナルキャラクターの天海をひとことで言えば、野心家という言葉で形容できるだろう。政治家への転身を希望し、政財界と人脈を築いては、自分を売り込むことに余念のない男。家族とは別居中で、妻の香織(比嘉愛未)との関係は冷え切っている。マキャベリズムの権化のような天海を、これまでの諸作品で見られた欠点もあるが人間らしい主人公やひたむきな熱血漢と並べて論じるのはやや抵抗感がある。ネットに引っ掛かったウミガメの赤ちゃんを海に帰す優しい一面もあるが、いまひとつ共感できない天海を見続けてしまうのは、それが誰もが一度は会ったことがあるような人間のタイプをつかんでいるからだろう。きれいなところばかりではない姿がかえってリアリティを増幅し、本作のピカレスクロマンとしての一面を引き出した。
天海は策士である。弁舌巧みに世良と田所を公聴会で引き合わせたかと思うと、自身の疑念を解消するために世論を操作することもいとわない。天海が本音を垣間見せるのは常盤の前だけで、見えにくい天海の内面を私たちは周囲の反応を通して知ることになる。そんな天海の前に現われたのが田所であり、権力の世界に生きてきた天海の本心が田所の登場によってあらわになる。相次ぐ地震は天海の心の揺れを反映しているようで、関東沈没の証拠となるスロースリップと真実に蓋をしたくない天海の心の叫びは、日之島の水没によって時を同じくして噴出する。そこに希望を見出すことはできるのか?
■放送情報
日曜劇場『日本沈没―希望のひと―』
TBS系にて、毎週日曜21:00~21:54放送
出演:小栗旬、松山ケンイチ、杏、ウエンツ瑛士、中村アン、高橋努、浜田学、河井青葉、六角慎司、山岸門人、竹井亮介、高野ゆらこ、与田祐希(乃木坂46)、國村隼、小林隆、伊集院光、風吹ジュン、比嘉愛未、宮崎美子、吉田鋼太郎(特別出演)、杉本哲太、風間杜夫、石橋蓮司、仲村トオル、香川照之
ナレーション:ホラン千秋
原作:小松左京『日本沈没』
脚本:橋本裕志
プロデュース:東仲恵吾
製作著作:TBS
(c)TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/nihon_chinbotsu_tbs/
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