『ブルーピリオド』アニメでさらに拡がった色鮮やかな世界 “青い渋谷”を飛んだ八虎の心

第1話の見せ場となった“青い渋谷”

 なかでも、第1話の見せ場と言えばやはり、八虎が青い渋谷を飛んでいくイメージシーンだろう。早朝の渋谷を歩いている時、その景色を「青い」と感じた八虎。けれど、ビルとコンクリの街並みの色が青いわけはなく、それを口にして友達に笑われてしまう。けれど、森先輩の「あなたが青く見えるなら、りんごもうさぎの体も青くていいんだよ」という言葉に背中を押され、八虎は真っ青に塗った渋谷の絵を描く。無心で筆を動かしている八虎の心は、「青い渋谷」を飛んでいる。原作1巻でも屈指の名シーンであるこの場面が、アニメーションの中で本当に青く色づき、八虎が自由に飛び回る様子は、言い知れぬ解放感を与えてくれる。

 そして、完成した絵を見た友人に「なんとなくわかる」「八虎にはこんなふうに見えてんだ」と共感された時、「生まれて初めてちゃんと人と会話できた気がした」八虎は、思わず涙ぐむ。八虎を包む膜が、ほんの少し破れた瞬間だ。

 破れた膜の隙間から、自分の目で現実を見た八虎は、初めて誰に合わせるわけでもなく、絵を描くのが好きだ、と感じ、美大に行きたいと思うようになる。それまでの、「食べていけないことをやっても意味がない」と言っていた理性的で現実的な八虎なら、絶対にありえなかったであろう選択肢だ。

 日本一の倍率を誇る東京藝大の絵画科の受験は、もちろん険しい。これから八虎を待ち受けるのは、初めて触れる、そして想像を絶する、「好きだからこそ苦しい」美術の世界だ。それでも、八虎はもがきながら膜を破り、少しずつ自分の世界を切り拓いてく。それにつれて、八虎の見る景色も、きっとより鮮明になっていくことだろう。文字通り色鮮やかな世界が、これからアニメの中でも広がっていくことに期待したい。

■放送情報
『ブルーピリオド』
MBS・TBS系全国28局ネットにて、毎週金曜日25:25~
BS朝日にて、10月3日(日)より毎週日曜日23:00~
AT-Xにて、10月7日(木)より毎週木曜日21:00~
Netflix(先行独占配信)
声の出演:峯田大夢、花守ゆみり、山下大輝、河西健吾、宮本侑芽、青耶木まゆ、平野文、福西勝也、神尾晋一郎、橘龍丸ほか
原作:山口つばさ 『ブルーピリオド』(講談社『アフタヌーン』連載)
総監督:舛成孝二
監督:浅野勝也
シリーズ構成・脚本:吉田玲子
キャラクターデザイン:下谷智之
美術監督:仲村謙 / 金子雄司
美術設定:緒川マミオ / 中島美佳
撮影監督:服部安
色彩設計:歌川律子
3DCG監督:大見有正
(c)山口つばさ・講談社/ブルーピリオド製作委員会
公式サイト:https://blue-period.jp/

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