佐藤健と阿部寛に聞く、役作りへの心得 「その場で感じた感情をただ出していく」

 映画『護られなかった者たちへ』が10月1日に公開される。本作は、中山七里の同名小説を映像化したもの。東日本大震災から9年後の仙台で起きた凄惨な連続殺人事件を追うなかで、震災によって生じた問題やそれらと向き合う人々の様子も描いたヒューマンミステリーだ。瀬々敬久が監督を務め、林民夫が瀬々と共に脚本を手がけた。

 リアルサウンド映画部では、殺人の容疑をかけられる利根泰久役の佐藤健と、利根を追う刑事・笘篠誠一郎役の阿部寛にインタビュー。出演者の芝居についてや現場を通して感じたことなど話を聞いた。(編集部)

佐藤健「こういう気持ちになってくれっていうのは考えない」

ーー被災された方の視点を多角的に描かれていて、現在でも震災によってあらゆる問題を抱えながら生きている人がいることを教えてくれるような作品でした。お二人は本作の脚本を読んでいかがでしたか?

阿部寛(以下、阿部):震災から10年経ってそこから出てくる問題点って色々ある。そういうものを改めてこの作品の中で取り出せるのはいいことだと思いました。震災の描き方はもちろんですが、ミステリーとしても楽しめる作品でもあります。それを瀬々(敬久)さんが手がける。人間の感情の機微が丁寧に描かれていて、この作品に対する思いを感じました。

阿部寛

佐藤健(以下、佐藤):僕はオファーを頂いて原作を最初に読みました。生活保護の実像だったりを静かに問題提起しているような作品で。正直僕も知らないことはたくさんあったんですけど、そういった意味でも、この作品を映画化してたくさんの方に観てもらうことは非常に意義のあることだなと思いましたし、映画化するんだったら絶対に参加したいなと思っていました。

ーー本作は、利根と笘篠の視点が並行して描かれた作りになっていて、お二人は後半で対峙することになります。阿部さんは佐藤さんのお芝居を受けてどのように感じられましたか?

阿部:笘篠は震災によって傷つきながらも孤高の刑事をやるわけですが、利根という人物に対して自分と同じ何かを感じて、追いかけていったように思います。

ーーなるほど。佐藤さんはいかがでしょうか。

佐藤健

佐藤:基本的には利根が感情をぶつけて、笘篠はそれを受け止めていく関係性だったので、とにかく僕は思い切ってぶつかっていくっていう思いでやりました。

ーー佐藤さんは以前インタビューで、“映画に関しては作り手の予想をはるかに上回るくらい観客がいろいろなことを想像してくれる。だから現場で感じたまま、心のままを表現している”とおっしゃっていましたね。本作を観て、改めて佐藤さんが言っていたことがよくわかります。

佐藤:そうですね。この作品に関しても僕は利根としての人生を生きるだけであって、現場ではその場で感じた感情をただ出していく。観てくださる人たちに、どう楽しんで、こういう気持ちになってくれっていうのは考えないですね。

ーー阿部さんもお芝居をする上で意識されていますか?

阿部:現場で感じることは大事にしています。作品にはいろんな登場人物がいて、それを演じる役者がいる。佐藤さんや清原(果耶)さんたちと実際に目の前で起きていること共有し、彼らを見て、笘篠を作っていけたらと思っていました。あとは瀬々監督にすべてをお任せしたいという心構えでした。

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