『古見さん』が描く“フツー”とは何か 溝端淳平が体現した青春の一コマ

 よるドラ『古見さんは、コミュ症です。』(NHK総合)第4話は、転校が決まった片居誠(溝端淳平)とのエピソード、新たに登場する潔清子(大西礼芳)とのエピソードの2本立てで構成されている。

 大きな体格に金髪のオールバックと見た目は極めてイカついが、実は繊細な心を持つ片居。せっかく只野(増田貴久)や古見(池田エライザ)との輪にも入れたところで、マレーシアへの転校が決まってしまったのだ。片居の望みで、只野、古見、万場木(吉川愛)は海へと足を向かう。

 実はこのエピソード、原作ではクラスメイト大勢で市民プールに行く物語で、そもそも片居や万場木がまだ友達になっていなかったりと大幅に内容を変えて構成し直されている。共通しているのは、只野が古見と手を繋ぐ場面と古見が擦り剥いて怪我をすること。自分のせいで空気を悪くしたと落ち込む古見に、只野は隣にそっと座り、「2人ともいい人だし、もし嫌われる心配とかしてるようだったら、そんなのは全然大丈夫です」と声をかけるのだ。

 「自分が嫌になります」と綴る古見の思いに呼応するかのように、片居もまた不登校だった過去の自分から変わりたいと決心した自身の思いを語り始める。フツーとは何か。それは人それぞれの価値観によって決まるものだ。片居にとっては、こうして友達と海でワイワイ遊ぶことがフツーであり、そんな自分になることを夢見ていた。万場木も、古見も。同じ悩みを持つ者同士が、夏の終わりにフツーの思い出を残すことができたのだった。

 演じる溝端淳平は、今回の役のために自らの髪を金に染め上げている。どこか古臭いイメージのヤンキーを演じつつ、実は心は怯えているといった冷静になってみるとハチャメチャな役柄。そんな片居を演じきり、胸の内に秘めていた思いを吐露する海辺でのシーンは、見事に青春の一コマを体現して見せた。

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