『チェリまほ』に続き『うきわ』も高評価 本間Pに聞く、ドラマ作りで大切にしていること

 門脇麦主演ドラマ『うきわ ―友達以上、不倫未満―』(テレビ東京系)が9月27日に最終回を迎える。麻衣子(門脇麦)と二葉さん(森山直太朗)、配偶者に浮気されているという共通点を持つ2人が、お互いの傷に寄り添いあう中で距離を近づけてきたが、第7話では麻衣子の夫・たっくん(大東俊介)と福田さん(蓮佛美沙子)、二葉さんの妻・聖(西田尚美)と田宮(田中樹)がそれぞれの関係に終止符を打った。そんな中、二葉さんは福岡に転勤することに。麻衣子と二葉さん、2人の未来はどうなるのかーー。

 ドラマの演出や役者陣の好演も話題となり、早くも「ロス」の声があふれている本作。最終回の放送を前に、昨年『30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい』(以下『チェリまほ』)も手がけた本間かなみプロデューサーに、『うきわ ―友達以上、不倫未満―』の制作背景やドラマ作りへの思いについて話を聞いた。

「暮らしの中にある“さざ波感”を意識した」

本間かなみプロデューサー

ーードラマの反響や手応えはいかがですか?

本間かなみ(以下、本間):『うきわ』は観る方に委ねる部分が大きい作品で、行間や余白、言葉にできない気持ちを言語化するのではなく、映像的に表現することを大切にしました。テレビドラマというフィールドで、それが今の時代どう届くのか未知数なところがあったのですが、SNSを見ると皆さんそれぞれの感性で咀嚼してくださっていて、受け取っていただけたことがとても嬉しかったです。

ーー野村宗弘さんの原作漫画との出会いについて教えてください。どのような点に惹かれたのでしょうか。

本間:最近、白か黒かで分断して世界を整理整頓していく怖さを感じていて。だから、個人で持っているモラルや善悪のボーダーに触れられるような、整理整頓できない人間の不完全さを描ける作品を作りたいと思い、不倫だけでなくタブーな題材を扱っている作品を探していました。その中で、野村先生の『うきわ』を見つけたんです。想像力を掻き立てられる余白や、登場人物たちの心情が作品全体に浮遊しているような情緒ある世界観に引き込まれました。そして、出てくる人たちが愛せるところばかりでなく、優等生ではない。人間の毒や弱さや矛盾、ずるさも持ち合わせていて、それを否定も肯定もせず、ただただ誠実に描いている。それがすごく刺さって、企画させていただきました。

ーー企画はいつ頃から考えられていたのでしょうか?

本間:去年の夏頃からです。一度目の企画募集では落ちてしまったんですが、阿部(真士)チーフプロデューサーから「面白いと思うから、企画書をもう少し頑張ってみるといいよ」とアドバイスをもらって、リライトを重ねて出し続けていたら通してもらえました。野村先生も担当編集さんもすごく温かいお言葉で応援してくださって、実現することができました。

ーー野村さんの原作漫画を映像化する上で、何か意識された点はありますか?

本間:野村先生の作る余白や情緒感をドラマでも表現したかったので、描くこと、描かないことのオンオフ、輪郭をつけるもの、つけないもの、暮らしの中にある“さざ波感”は意識しました。

ーー門脇麦さんと森山直太朗さんには独特の空気感がありますよね。主人公・中山麻衣子役に門脇麦さんを起用した理由を教えてください。

本間:麻衣子には、自ら封じてしまっている可能性や強さが眠っています。今まで自分の人生の舵を自分で取ることについて、深く考えずに生きてきた人で、今描かれることが多い、自立した女性とは正反対に近い人です。夫であるたっくんの浮気、二葉さんや佐々木くん(高橋文哉)との出会いで、内在しているものが目覚めていくわけですが、誰かの船にタダ乗りしてしまいたい甘えや弱さや諦めって、多かれ少なかれ通ってきた人はいると思っていて。麻衣子の人生へのスタンスは、誰かの過去であり、今であり、未来かもしれない。だからこそ、麻衣子のくすぶりや目覚めに説得力を持たせられる方に演じていただきたいと思っていました。門脇さんはそういう内在的なものにパワーを持たせられる方で、作品を地に足の付いたものにする力のある方だと感じていたので、オファーさせていただきました。

ーー森山直太朗さんはNHKの連続テレビ小説『エール』(2020年4月~10月)以来のドラマ出演となりましたが、二葉一役に抜擢された理由は?

本間:まさにその『エール』を拝見して、誰かを見る眼差しに温かみのある方だと思いました。演じていただいている二葉さんは、どこにでもいるような近所の人ですが、思わず身を委ねたくなってしまうような包容力の持ち主です。その親近感や包容力って、ある種の隙みたいなものだと思っていて。直太朗さんの温かみがその隙を素敵なものにしてくださる気がして、オファーさせていただきました。

ーーSixTONESの田中樹さんはドラマの出演自体が久しぶりでもありましたが、演じている田宮悠は普段のイメージとは正反対の役柄で、新境地だなと感じました。

本間:田宮くんは、不倫に絡む人たちの中で一人だけ相手に向ける気持ちの種類が違います。唯一“うきわ”ではなく純粋な恋心を向けている。そんな真っすぐさにときめくことができて、聖役の西田さんと並んだときに湿り気を出せる方がいいと思っていました。田中さんはお芝居をするときの声色、アンニュイな雰囲気が色っぽいなと感じていて。それでいて、バラエティで見せる笑顔の屈託のなさが、田宮くんを素敵にしてくれるのではないかと思って、田宮役をお願いしました。

ーーキャスティングにも大きなこだわりがあったのですね。

本間:麻衣子さん、二葉さん、聖さんは空気感が似ている方々を、たっくんは、その3人と並んだときに“陽キャ感”が立つ方を、というのは意識していました。

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