『プロミス・シンデレラ』早梅が貫いたメッセージ 全員が新たな一歩を踏み出すラストに

 早梅(二階堂ふみ)が、片岡兄弟だけでなく、芸者の菊乃(松井玲奈)を彼女自身がかけた呪縛から解放し、さらには自分自身を縛るものからも解き放たれた『プロミス・シンデレラ』(TBS系)最終話。

 菊乃によって監禁された壱成(眞栄田郷敦)。10年前に早梅が成吾(岩田剛典)からのせっかくの申し出を断ったことが許せないという菊乃だが、「早梅さんに汚れてほしいの。理不尽を受け入れてもっともっと壊れてほしい。そんな彼女を見たら成吾だってきっと……」というのが彼女の本音のようだ。成吾の幸せを願ってのことというよりは、いつまで経っても彼の記憶の中から消えず、彼の心を独り占めして離さない早梅の“正しくない”姿を引き出し、成吾に早梅のことを幻滅させたかったのだ。自分は早梅の代わりにはなれない、早梅の代わりに成吾を幸せにできないと悟ったからこそだ。

 どんな理不尽な目に遭ったっていつも正しく真っ直ぐな早梅の姿が眩しく羨ましくある一方、同時に憎らしくて仕方なくどうしても素直に“羨ましい”とは言えなかったのだ。いじめられっ子の自分を助けてくれた早梅の“真っ直ぐな正しさ”が、自分が初めて好意を寄せた成吾の心まで魅了する。到底菊乃には真似できない芸当だ。それに本来真似しようとなんてしなくてよかったのだ。

 早梅は菊乃に言う。「あなたは弱くなんかない。ずるくても惨めでも必死で生きてきたんでしょ? 私みたいになろうなんて思わなくて良かったのに。あなたはあなたよ」と。

 早梅のメッセージはずっと一貫している。壱成の老舗旅館の息子というバックグラウンドに寄って来る友人もどきにも「お金や家柄なんて関係ない。こいつはこいつよ」と言い放ち、優秀な兄・成吾と常に比較されてきた壱成のありのままを見てくれる。10年前の成吾も早梅といる時だけは実家のことや親のことを忘れられると話していた。

 みんな、「あなたはあなた」「そのままでいいんだよ」と言ってほしいのだ。姿形を変えた菊乃としてではなく、加賀美明として「早梅の代わりにではなく、ずっと側にいて支えてくれた君自身に感謝している」という成吾の言葉に菊乃は泣き崩れた。彼女の心に巣食う虚無感や黒いモヤモヤがスッと収まった瞬間を見たような気がする。10年前の「一緒に日直になれて良かった」という成吾からのたった一言を励みにこれまで生きてきたあまりに真っ直ぐで純粋な想いが彼女を“10年前”に縛り付けていたようにも思えるが、菊乃の、明の中での時計が少しずつでも動き出すことを願ってやまない。

関連記事