『プロミス・シンデレラ』早梅と壱成が急接近 一方で際立つ成吾の報われなさ

 今話、これでもかというほどに発揮された芸者の菊乃(松井玲奈)の一筋縄ではいかないねじれた愛情表現は、何より彼女自身を追い込んでおり、観ていてあまりに苦しい。特にここ最近の恋愛ドラマでは性悪な恋敵の出現というのはあまりない展開だけに、この独特の存在感はインパクト大だ。彼女は「相手の幸せを願って自分が身を引く」ということの意味を完全に履き違えている。菊乃は全く身を引けていない。その執着心たるやおぞましく、過干渉に他ならない。早梅をピンチに追いやり、成吾が手を差し伸べられるようなシチュエーションを整え、成吾と早梅がくっつくように仕向けているのだろうが、早梅にとって成吾は10年前と同じく「正義のヒーロー」のままだ。正義のヒーローに皆が恋に落ちる訳ではない。菊乃自身がきっと成吾に過去に救われた経験があり、彼女は正義のヒーロー・成吾に恋したのかもしれない。回想シーンでの菊乃は何やら虐められていたり、今とは全く違う姿形をしているが、そんな菊乃に壱成は言うのだ、「俺は相手の全部が欲しくなるね。過去もひっくるめて全部」という最上級の愛情表現を。訳ありの過去を持っているであろう菊乃にとって、「過去もひっくるめて全部愛される」なんてことは想像できないことなのだろうし、その一方で最も彼女が欲している言葉のようにも思える。

 必死に好きな人のために、成吾のためにと間違った方向に画策する様子は「役に立たない自分など価値もないし愛されない」という強迫観念とも表裏一体のようだ。そして、この生真面目とも捉えられる部分は旅館の副社長としての職務を常に全うしようとする成吾と似ているところでもある。だからこそ、成吾もなんだかんだ言ってこれまでは菊乃を拒むことができなかったのかもしれない。彼女をここまで突き動かす原動力がきっととんでもないピュアな想いであるに違いないからこそ、容赦がなく恐ろしいし、彼女がやっていることは許されることではないものの、何よりいつまで経っても満たされない彼女が不憫だ。

 早梅の気持ちは壱成にあることはもう明白だ。崖から突き落とされ思い出すのは、壱成から花火大会に誘われた時のことだし、成吾が助けに来てくれても壱成と一緒に花火大会を見ることで頭がいっぱいだ。菊乃の計らい全てが裏目に出て、早梅の中にある壱成への想いを確信させるばかりだ。

 手を繋ぐことさえ脳内シミュレーションを重ねに重ね踏み出せなかった壱成が、今話ラストに一気に距離を縮めた。

 今、全てのボールを持っているのは早梅だ。彼女がどう自分の“今の気持ち”に恐れず向き合い、どんな決断をするのか。決断の時はもうすぐそこまで来ている。

■放送情報
火曜ドラマ『プロミス・シンデレラ』
TBS系にて、毎週火曜22:00〜22:57放送
出演:二階堂ふみ、眞栄田郷敦、松井玲奈、井之脇海、松村沙友理、堺小春、高橋克実、友近、森カンナ、金子ノブアキ、三田佳子(特別出演)、岩田剛典
原作:橘オレコ『プロミス・シンデレラ』
脚本:古家和尚
プロデューサー:橋本芙美、久松大地
演出:村上正典、都築淳一
製作:共同テレビ、TBS
(c)TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/promise_cinderella_tbs/
公式Twitter:@promisecinderella_tbs
公式Instagram:promisecinderella_tbs

関連記事