そして、その不倫が“バレる”のに肝心になってくるのが「証拠」。これも不倫ドラマが増えていく中で、どんどんデジタルデバイスを駆使した描写が作品の中に組み込まれている印象が強い。『にぶんのいち夫婦』や『サレタガワのブルー』でも、共通してInstagramから浮気相手や、不倫裏アカウントの特定が描かれたり、スマホと同期しているタブレットでLINEのやりとりを見て発覚したりと、ほぼ確実に今の時代はSNSで証拠を掴まれていく時代。しかしこの点でも、『欲望の住処』は“目の見えない旦那”という設定をフルで活かしている。劇中で主人公が「目撃されないから証拠は掴まれない」など呑気に考えているが、それが旦那の担当編集・藤田（盛隆二）というキャラクターの登場で一気に覆される。そしてこの藤田というキャラクターの役割がそれ以上であることも、物語が進む上でわかってくる。クライマックスにかけて畳みかけられるように明かされていく衝撃の事実に、思わず不倫でヒヤヒヤしていた前半に懐かしささえ感じてしまう本作。イヤードラマだからといって寝る前に聞いていたら、あまりにもビックリすることが多すぎて完全に目が覚めてしまうことだろう。ここに、やはり視覚を一切使わないからこそ洗練された本作の物語の力量と新しさを感じる。

　なにより、初めから“見えていたら”気づけたはずの最も大事な事実が最終話で明かされた時、私たちは改めて何度も騙されてきたことを知る。イッキ見必至、改め“イッキ聞き”必至の『欲望の住処』は、不倫ものに限らず今後のドラマのストーリーテリングに影響を与える一作となるだろう。

■配信情報
『欲望の住処』（全8話）
NUMAにて配信中（毎週月曜新エピソード更新）
出演：橋本マナミ、池田成志、ゆうたろう、盛隆二ほか
脚本・監督：松本千晶

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